慢性腰痛に対する腰椎固定術は長期転帰を改善しない

提供元:ケアネット

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公開日:2013/12/11

 

 慢性腰痛の治療において、保存療法に対する手術療法の有効性については議論の余地があり、長期転帰はほとんど知られていない。スイス・Schulthess KlinikのAnne F. Mannion氏らは、平均11年間にわたる追跡調査を行い、脊椎固定術と認知行動・運動療法とで患者の自己評価に差はないことを示した。保存療法で悪化しなかったことから、手術のリスクを考慮すれば慢性腰痛に対する腰椎固定術は支持されるべきではない、とまとめている。Spine Journal誌オンライン版2013年11月6日の掲載報告。

 研究グループは、脊椎固定術と認知行動・運動療法の長期転帰を比較することを目的に、ノルウェーおよび英国の3施設において無作為化臨床試験を行った。

 対象は、1年以上症状を有し脊椎固定術の適応があると考えられた慢性腰痛患者473例であった(手術療法群242例、認知行動・運動療法群231例)。

 長期追跡後に、主要評価項目としてオスウェストリー障害指数(ODI:0~100)、副次的評価項目として疼痛強度(視覚的アナログスケール(VAS))、疼痛の頻度、鎮痛薬の使用、勤務状況、健康関連QOL(EuroQol VAS)、治療満足度などを調べた。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間は初回治療後平均11.4年(範囲8~15年)で、長期追跡調査を完了したのは手術療法群140例、認知行動・運動療法群121例、計261例(55%)であった。
・ODIは、両群間で統計学的および臨床的な差は認められなかった。
・認知行動・運動療法群に対する手術療法群の調整済ODIスコア平均差は、intention-to-treat解析で-0.7(95%信頼区間:-5.5~4.2)、as-treated解析で-0.8(同:-5.9~4.3)であった。
・副次的評価項目の結果は、ODIとほとんど一致し、両群で差はみられなかった。

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(ケアネット)