殺虫剤でアルツハイマー病リスクが増加 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2014/02/14 米国・ラトガース大学のJason R. Richardson氏らは、アルツハイマー病(AD)患者では殺虫剤成分の代謝物であるジクロロジフェニルジクロロエチレン(DDE)濃度が上昇していることに着目し、血清DDE濃度とADとの関連、およびアポリポ蛋白E(APOE)遺伝子型の関与を明らかにするためケースコントロール研究を行った。その結果、血清DDE高値はADのリスク上昇と関連していること、APOEε4アレルを保有する例でその関連が強くみられることを報告した。JAMA neurology誌オンライン版2014年1月27日号の報告。 遅発性ADの原因はいまだ不明であるが、遺伝的、環境的およびライフスタイルなどの要因が複合して発症に関与していると思われる。これまで、限られた疫学研究により、職業上の殺虫剤への曝露がADと関連していることが示唆されていることから、研究グループは以前、20例という少数例の検討ではあるが、AD患者で殺虫剤のジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)の代謝物であるDDEの血清濃度が上昇していることを報告した。本研究では、血清DDE濃度とADとの関連、およびその関連にAPOE遺伝子型が関与しているか否かを検討した。エモリー大学アルツハイマー病研究センターおよびテキサス大学サウスウェスタンメディカルスクール・アルツハイマー病センターから、AD例ならびに対照例を抽出しケースコントロール研究を行った。AD86例と対照79例において、血清DDE濃度を測定。Mini-Mental State Examination(MMSE)スコアによりADの診断と重症度を評価し、APOE4との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。 ・AD例の血清DDE濃度(平均[SEM]:2.64[0.35]ng/mgコレステロール)は、対照(同:0.69[0.1]ng/mgコレステロール、p<0.001)と比較して3.8倍高かった。 ・DDE値の最高三分位におけるAD発症のオッズ比は、4.18(95%CI:2.54~5.82、p<0 .001)で、MMSEスコアは、より低スコアであった(-1.605、範囲:-3.095~-0.114、p<0 .0001)。 ・APOEε4アレルを保有するサブ集団のDDE値の最高三分位におけるMMSEスコアは、 APOEε3アレルを保有するサブ集団に比較して、-1.753ポイント低かった(相互作用p=0.04)。 ・血清DDE濃度と脳内DDE濃度との間に強い関連がみられた(ρ=0.95)。 ・ヒト神経芽細胞腫細胞にDDTまたはDDEを曝露させると、アミロイド前駆体蛋白レベルの増加がみられた。 ・以上のことから、血清DDE濃度の上昇はADリスクの増加と関連し、APOEε4アレルがより強く関与していることが推察された。DDTとDDEがアミロイド前駆体蛋白レベルを上昇させたことは、DDE曝露とADとの関連の妥当性を裏付ける知見と言える。血清DDE濃度が高く、APOEε4アレルを保有している例の特定が、ADの早期発見につながる可能性がある。 関連医療ニュース アルツハイマー病、アミロイドβ蛋白による“炎症反応”が関与 日本人の認知症リスクに関連する食習慣とは 複雑な薬物療法レジメン、認知症介護者の負担増加 (ケアネット) 原著論文はこちら Richardson JR et al. JAMA Neurol. 2014 Jan 27. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、最終OS結果(KEYNOTE-522)/NEJM(2024/09/27) 複雑病変へのPCI、OCTガイドvs.血管造影ガイド/Lancet(2024/09/27) 重症インフルエンザに対する抗ウイルス薬の有効性(解説:小金丸博氏)(2024/09/27) 転移を有するホルモン感受性前立腺がん、ダロルタミド+ADTがrPFS改善(ARANOTE)/ESMO2024(2024/09/27) 日本人治療抵抗性うつ病に対するケタミン治療の有用性~二重盲検ランダム化比較試験(2024/09/27) サシツズマブ ゴビテカン、トリプルネガティブ乳がんに承認/ギリアド(2024/09/27) アミバンタマブ、化学療法との併用でEGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんに承認/ヤンセン(2024/09/27) 患者満足度向上対策をクリニックの6割が実施/医師1,000人アンケート(2024/09/27) 肛門扁平上皮がん1次治療、新規抗PD-1抗体上乗せが有用(POD1UM-30)/ESMO2024(2024/09/27) [ あわせて読みたい ] 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24) 柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24) 松戸市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/20) マッシー池田の神経内科快刀乱麻!<上巻>(2012/12/01) マッシー池田の神経内科快刀乱麻!<下巻>(2012/12/01) Step By Step!初期診療アプローチ<第3巻> 【神経症候シリーズ(前編)】(2012/12/01) Step By Step!初期診療アプローチ<第4巻> 【神経症候シリーズ(後編)】(2012/12/01)