慶應義塾大学の吉田 和生氏らは、統合失調症患者にみられる抗精神病薬使用後の遅発性ジスキネジア(TD)と、ドパミンD2受容体占有状況との関連について検討を行った。その結果、不随意運動を認めた例では、認めなかった例に比べて、ドパミンD2受容体占有レベルのトラフ値が有意に高く、強力なドパミンD2受容体阻害がTDのリスクを増大させる可能性が示唆されたという。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年2月1日号の掲載報告。
研究グループは、統合失調症患者において抗精神病薬により誘発されるTDと、ドパミンD2受容体占有状況との関連を評価するため、Clinical Antipsychotic Trials in Intervention Effectiveness(CATIE)のデータベースを用いて検討を行った。CATIEのデータセットから、同研究の第I相試験でベースライン時の異常不随意運動評価尺度(Abnormal Involuntary Movement Scale:AIMS)スコアが0、かつその状態が6ヵ月以上維持されていた被験者218例を登録した。母集団薬物動態解析ならびに著者らが開発したD2予測モデルを用いて、血漿中抗精神病薬濃度に基づくAIMS評価日におけるドパミンD2占有レベルのピーク値およびトラフ値を推定した。また、AIMSスコア2以上の患者とスコア0の患者の推定ドパミンD2受容体占有レベルを、Mann-Whitney U検定を用いて比較した。
主な結果は以下のとおり。
・被験者218例の投与状況は、リスペリドン投与症例78例、オランザピン投与症例100例、ジプラシドン(国内未承認)投与症例40例であった。
・不随意運動を認めた被験者(23例)は、不随意運動を認めなかった被検者(195例)と比較して、推定ドパミンD2受容体占有レベルのトラフ値が有意に高かった(71.7±14.4% vs. 64.3±19.3%、p<0.05)。
・一方、推定ドパミンD2受容体占有レベルのピーク値に関しては、両者の間で有意差は認められなかった(75.4±8.7% vs. 72.1±9.9%、p=0.07)。
・3種類の薬剤別に解析を行ったところ、ドパミンD2受容体占有レベルのトラフ値およびピーク値に薬剤間での有意な差はみられなかったが、不随意運動を呈した被験者では一貫してその値が高値であった。
・以上のように、抗精神病薬によるドパミンD2受容体の強力な阻害は、遅発性の不随意運動のリスクを高める可能性が示唆された。大規模試験にて確認することが求められる。
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(ケアネット)