英国・クィーンズ大学ベルファストのCarole Parsons氏らは、進行した認知症患者に対する適切な薬物治療を行うための薬物カテゴリーを作成すること、また、それらの患者で用いられている薬物を調べるための、長期前向きコホート試験の実現可能性を評価し、開発したカテゴリーを使用することで進行した認知症患者が入所するナーシングホームで処方が適切になるかを確認する検討を行った。これまで同様の評価や検討は行われていなかった。Drugs & Aging誌オンライン版2014年12月6日号の掲載報告。
検討は、北アイルランドの進行した認知症患者が入所するナーシングホームで行われた。進行した認知症(定義:Functional Assessment Staging[FAST]スコアが6E~7F)に対する薬物療法の適切性について、専門臨床医らが参加した3ラウンドのデルファイ法によるコンセンサスパネルサーベイにより評価した。その後、長期前向きコホート実行可能性試験を、3件のナーシングホームで行った。参加施設で臨床および薬物使用データを収集し、認知症重症度の短期検査を実施。データは、ベースライン、試験開始から9ヵ月または死亡するまで3ヵ月ごとに収集した。試験期間中に死亡した場合、データは死亡から14日以内に収集した。施設入所者に対する薬物処方の適切性を決定するため、データを収集するたびに、コンセンサス委員会による薬物治療の適切性尺度をレトロスペクティブに適用した。
主な結果は以下のとおり。
・サーベイに含まれていた97個の薬物および薬物クラスのうち、87個(90%)でコンセンサスが得られた。
・長期前向きコホート実行可能性試験には、入居者15例が登録された。そのうち4例はデータ収集期間中に死亡した。
・1例当たりの平均処方薬物数は、ベースライン時16.2、3ヵ月時19.6、6ヵ月時17.4 、9ヵ月時16.1であった。
・ベースライン時に、コンセンサス委員会が不適切と考える薬物を1つ以上服用していた患者は14例で、処方された薬物の約25%は不適切だと考えられた。
・死亡後の収集データから、死亡者について、不適切な薬物処方が減少し、適切な薬物療法の割合が増加していたことが示唆された。
・本研究は、英国において進行した認知症患者に対する、薬物の適切性の指標を考案ならびに適用した最初の研究であった。
・専門臨床医らが参加したデルファイ法によるコンセンサス委員会のサーベイは、このような指標の開発に適切な方法であった。
・ナーシングホームの進行した認知症入居者から、QOL、機能の状態、身体的な心地よさ、神経精神症状そして認知機能に関する情報を収集することは実行可能であった。
関連医療ニュース
日本では認知症への抗精神病薬使用が増加
これからのアルツハイマー病治療薬はこう変わる
認知症タイプ別、各認知機能の経過を比較
担当者へのご意見箱はこちら
(ケアネット)