「P-CAB」で酸関連疾患治療は変わるのか

提供元:ケアネット

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公開日:2015/05/14

 

 2015年4月14日、東京都中央区で武田薬品工業株式会社と大塚製薬株式会社の共催により、「酸関連疾患の最新情報 ~治療の現状と課題解決に向けて~」をテーマに、酸関連疾患メディアセミナーが開催され2つの講演が行われた。

酸関連疾患の現状と既存PPIの課題
 はじめに、三輪 洋人氏(兵庫医科大学 内科学消化管科 主任教授)により本セミナーのテーマとなる「酸関連疾患の最新情報 ~治療の現状と課題解決に向けて~」の講演が行われた。
 日本の胃食道逆流症(GERD)患者は、1990年代後半から年々増加しており、三輪氏によると「検診を受けた患者の約15%でGERDが見つかる」という。
 GERD治療では、第1選択薬としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)が使用されるが、PPIを服用しているにもかかわらず「GERD患者の約3人に2人が週1回以上GERD症状を感じる」という報告もある。GERD診療ガイドラインでもPPIの使用は推奨されているが、既存PPIには現在4つの課題が挙げられている。1)酸に不安定であるため、腸溶性製剤にする必要がある、2)最大効果を得るまでに内服後約3~5日間を要する、3)夜間に認められる酸分泌を十分に抑制できない、4)(代謝の関係で)酸分泌抑制効果に個人差がみられる、の4つである。
 2015年2月に発売された酸分泌抑制薬タケキャブ(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー[P-CAB]、一般名:ボノプラザン)は、内服開始後、数時間で最大効果を発揮する点や、代謝酵素(CYP2C19)の影響を受けにくい点が特徴である。P-CABは即効性を持つだけでなく、より強力に胃酸分泌を抑制する必要があるピロリ菌除菌や、重度のGERDでも効果を発揮するという特徴もある。
 しかし、GERDなどの酸関連疾患は慢性疾患であり、再発しやすいため継続的に薬剤が処方される傾向がある。三輪氏は、「薬剤服用の負担を減らすためにも、飲食習慣や生活習慣の改善も大切である」と指摘した。

P-CABの特性
 中村 浩己氏(武田薬品工業 メディカルアフェアーズ部長)より「P-CABの阻害特性や臨床試験成績」の報告が行われた。
 今回発売されたボノプラザンは、プロトンポンプを抑制するだけではなく、管腔側(acid space)に高濃度かつ持続的に貯留するため長時間胃酸分泌抑制効果を発揮する。実際、ピロリ菌除菌(PH>5を長期間保つ必要がある)の効果を検討した二重盲検比較試験では、ボノプラザン20mgとアモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用投与終了4週後に1次除菌率92.6%、2次除菌率98.0%という結果が得られている。
 GERD患者を対象とした第III相試験でも、ボノプラザン20mg投与4週で96.6%、投与8週で99.0%の治癒率であり、「ボノプラザン20mg投与4週の治癒率と、ランソプラゾール30mg投与8週の治癒率が同程度であった」と中村氏は述べた。
 ロサンゼルス分類グレード別ではC/DのGERD重症患者の治癒率は、ボノプラザン20mg投与4週で96.0%、投与8週で98.7%であり、再発率は投与24週後で4.7%であることが明らかにされた。また、CYP2C19活性が高くボノプラザンが速やかに代謝されてしまうEM(extensive metabolizer)型に対して、治癒率は、投与4週で96.1%、投与8週で98.9%であり、再発率は投与24週後で1.8%であることも示された。
 中村氏は、「以上の結果から、ボノプラザンは治癒率および再発抑制に関して、従来のPPIの課題を克服する薬剤である。しかしながら、長期の安全性については、今後も注視していく必要がある」と述べた。

 P-CABの登場で酸関連疾患の治療がどのように変わっていくのか、P-CABの位置付けがどうなるのか、今後の動向に注目していきたい。

(ケアネット 佐藤 駿介)