マーストリヒト・アジア太平洋コンセンサスガイドラインでは、胃がんの既往のある患者へのHelicobacter pyloriの除菌を強く推奨している。がん研有明病院の本多 通孝氏らは、胃切除術を受ける患者への適切な除菌のタイミングを検討するため、オープンラベル単一施設無作為化比較試験を実施した。その結果、術前群と術後群で除菌成功率が同等であり、著者らは、「胃切除を予定している胃がん患者は、予定されている再建術式に関係なく、術前の除菌は必要ない」と結論している。Journal of the American College of Surgeons誌オンライン版2015年4月8日号に掲載。
著者らは、胃切除術を受ける予定の150例について、術前除菌群もしくは術後除菌群のいずれかに割り付けた。除菌治療のレジメンは、一般的な3剤併用療法(ランソプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシン)で実施した。術前群では、除菌治療後に手術を実施、術後群ではDay8に実施した。
主要評価項目は、残胃で除菌成功を達成した患者の割合であった。除菌成功の定義は、術後6ヵ月時点でC13尿素呼気試験および便中抗原とも陰性の場合とした。
主な結果は以下のとおり。
・8例を除き、術前群70例と術後群72例の計142例をITT解析に含めた。
・胃切除術はそれぞれ、ビルロートI法が18例、ルーワイ法が70例、幽門保存胃切除術が57例であった。
・除菌成功例の割合は、術前群と術後群でそれぞれ68.6%対69.4%(p=1.000)で、2群間でほぼ同等であった。
・再建術式におけるサブグループ分析でも有意差は認められなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)