市中肺炎において、早期に抗菌薬の点滴静注から経口投与に移行するスイッチ療法の有効性が報告されているが、誤嚥性肺炎については報告されていない。そこで、聖路加国際病院呼吸器内科 宇仁 暢大氏らは、誤嚥性肺炎患者を対象に、新たに設けられた市中肺炎に対する切り替え基準の可能性と有効性を前向き観察研究で検討した。その結果、患者の約75%がこの新たな切り替え基準を満たし、その約90%が経口投与に安全に移行したことから、この基準の有効性と実現可能性が示唆された。Respiratory investigation誌2015年9月号に掲載。
本研究の対象は、聖路加国際病院で10ヵ月の間に誤嚥性肺炎で入院した患者で、集中治療を要した患者は除外した。早期の切り替えの基準は、バイタルサインが安定していること(体温:38℃以下、呼吸数:24回/分以下、脈拍:24時間以上100回/分以下)と、嚥下評価が良好(反復唾液嚥下テスト2点以上、改訂水飲みテスト4点以上)であることとした。主要評価項目は、経口抗菌薬に移行後30日間、静注に戻すことなく治療が良好に完了することした。成功率は、先行研究に基づき60~75%と予想した。
主な結果は以下のとおり。
・誤嚥性肺炎で入院した70例のうち、32例(45.7%)が除外され、38例(54.3%)が選択基準を満たした。
・38例のうち、29例(76.3%)が切り替え基準を満たし、それぞれの入院期間中央値は、16日(5~30日)および30日(12~68日)であった(p=0.03)。
・切り替え基準を満たした患者のうち、26例(89.7%)が良好に経口治療を完了したが、3例(10.3%)が再度静注となった。
(ケアネット 金沢 浩子)