統合失調症患者の不安症状はしばしば軽視されている

提供元:ケアネット

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公開日:2015/12/01

 

 統合失調症患者において不安症状の有症率は65%にも上り、併存するさまざまな不安障害(強迫性障害や心的外傷後ストレス障害を含む)の診断は転換期を迎えている。南アフリカ・ケープタウン大学のHenk Temmingh氏らは、統合失調症患者における不安症の臨床所見、診断、神経生物学および薬物治療についてレビューした。著者らは、「統合失調症患者の不安症状や不安障害の診断および治療はしばしば軽視されている」と警鐘を鳴らしている。CNS Drugs誌オンライン版2015年10月19日号の掲載報告。

統合失調症患者における不安障害の有病率は38%と推定

 統合失調症患者における不安症についてのレビューの概要は以下のとおり。

・統合失調症患者における不安障害の有病率は38%と推定され、社交不安障害が最も一般的である。
・陽性症状の重症度は不安症状の重症度と相関するが、不安症は精神病症状とは独立してみられる。
・不安症は良好な病識と関連するが、うつ病、自殺傾向、医療サービスの利用および認知障害の増加とも関連している。
・不安症状を有する患者は、外在化症状とはまったく異なる他の内在化症状を有しているおそれがある。
・統合失調症における不安症の診断は、陽性症状(不安症をわかりにくくしている)、感情表出やコミュニケーションの乏しさ(診断を妨げる)およびアカシジアのため、困難と思われる。
・急性期精神症状消失後のアセスメントや、スクリーニング用質問票および疾患特異的な自己記入式質問票の使用によって、高い診断率が得られる。
・不安症を有する統合失調症患者では、自律反応の増加や中性刺激への反応増加以外の、不安誘発刺激存在下における恐怖回路の機能低下が認められている。
・最近の研究では、セロトニントランスポーター遺伝子、脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子およびセロトニン1a (5-HT1A)受容体の関与が示唆されているが、予備的研究であり再現研究が必要である。
・統合失調症患者の不安症状や不安障害に対する精神療法に関する無作為化比較試験は、ほとんどない。
・薬物療法に関しては、アリピプラゾールおよびリスペリドンが強迫および社交不安症状に、クエチアピンおよびオランザピンが全般不安症に有効であることが、少数の無作為化試験および非盲検試験で示されている。
・トリフロペラジンのような古い薬剤が、併存する不安症状を軽減する可能性もある。
・代替選択肢には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と抗精神病薬併用による増強療法等があるが、エビデンスは少なく(少数の無作為化試験、小規模な非盲検試験、症例報告)、チトクロムP450薬物相互作用ならびにQT間隔延長に注意が必要である。
・buspironeとプレガバリンによる増強療法も考慮される。

(ケアネット)