日本人を対象とした眼圧上昇とメタボリックシンドローム因子の変化との関連について、山梨大学大学院 社会医学講座助教の横道洋司氏らが、同県住民の健康診断データを用いて分析を行った。その結果、眼圧上昇は、血清トリグリセライド値・血圧値・空腹時血漿中グルコース値(FPG)の長期的な悪化と関連しており、一方で、血清HDLコレステロール値の改善と関連していたと発表した。著者は、「結果については慎重な解釈が必要である」と述べ、「血清脂質と眼圧との関連についてはさらなる生理学的な検討が必要である」とまとめている。BMJ Open誌2016年3月24日号掲載の報告。
先行研究で、心血管リスク因子の眼圧への寄与について検討されてはいるが、高度な相関があるのかについては、心血管疾患の基礎を成す交絡因子によって明白ではない。そこで研究グループは、メタボリックシンドロームの因子に焦点を絞り、眼圧上昇に関与するのか、およびどの程度関与するのかを明らかにする後ろ向きコホート研究を行った。
1999年4月~2009年3月に、民間医療センターを受診し有料の健康診断を受診した県内住民のデータを集めて分析した。
主要評価項目は、眼圧変化が加齢やメタボリックシンドローム因子の変化によって上昇しているのかとした。分析はピアソン相関係数と混合効果モデルを用い、断面調査と縦断研究にて評価を行った。包含された被験者データは、断面調査(2008年4月~09年3月)2万7例、縦断研究(1999年4月~2009年3月に3~10回受診した被験者データを包含)1万5,747例であった。
主な結果は以下のとおり。
・断面調査において、眼圧と年齢は負の関連が示された。一方で、腹囲、HDL-C値、トリグリセライド値、収縮期血圧値(SBP)、拡張期血圧値(DBP)、FPG値とは正の関連が示された。
・縦断的多変量解析の結果、眼圧変化との関連が有意であったのは、男性(-0.12mmHg)、10歳の加齢(-0.59mmHg)、HDL-Cの1mmol/L上昇(+0.42mmHg)、トリグリセライドの1mmol/L上昇(+0.092mmHg)、SBPの10mmHg上昇(+0.090mmHg)、DBPの10mmHg上昇(+0.085mmHg)、FPGの1mmol/L上昇(+0.091mmHg)であった(いずれもp<0.0001)。
(ケアネット)