眼外科領域でヒューマンエラー回避訓練は可能か?

提供元:ケアネット

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公開日:2016/06/29

 

 医療の特定領域では、チームワークを強化しエラーを減少させるヒューマンファクターに関する訓練が定期的に行われているが、眼科では確立されていない。英国・Moorfields Eye HospitalのGeorge M. Saleh氏らは、眼外科チームのための没入型ヒューマンファクターシミュレーション訓練を考案・検討し検証試験を行った。評価ツールとして、麻酔科医用ノンテクニカルスキル(ANTS)および外科医用ノンテクニカルスキル(NOTSS)が使用でき、重大な安全性に関するイベントが減少できることを示した。著者は、「眼科学のヒューマンファクターシミュレーションは、チームメンバーに対する新しい教育法であり、今後、さらにその有用性と実用的な適用法について検討することが望まれる」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2016年6月16日号掲載の報告。

 研究グループは、2013年12月12日~14年3月13日に、ロンドン大学病院および Moorfields Eye Hospitalにおいて、プロスペクティブなシナリオ型シミュレーションを行った。

 両施設で、手術室を完全にライブで体感できる(患者および手術室スタッフとの双方向コミュニケーション、麻酔および手術の設備、患者記録、バイタルサイン、手術室外の外科・麻酔チームとの電話連絡など)、没入型シミュレーション環境を用いた。

 参加者は、眼外科・麻酔の専門医と研修医、手術部のアシスタントとプラクティショナー、および眼科看護師で、実際の安全性インシデントに基づいたシナリオについて、ノンテクニカルスキルを評価する以下の4つのツール──手術におけるチームワークに関する観察評価(OTAS)、ノンテクニカルスキルスケール(NOTECHS)、麻酔科医用ノンテクニカルスキル(ANTS)および外科医用ノンテクニカルスキル(NOTSS)を用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・20のシミュレーション・シナリオ(誤った眼内レンズ埋め込み、誤った眼手術、誤った薬剤投与、患者取り違えなど)が検討された。
・評価ツール間の相関(ピアソンの積率相関係数)は次のとおりであった。
  NOTECHS vs. ANTS:0.732(95%信頼区間[CI]:0.271~0.919、p=0.01)
  NOTSS vs. ANTS:0.922(0.814~0.968、p<0.001)
  OTAS vs. ANTS:0.850(0.475~0.964、p<0.001)
  OTAS vs. NOTECHS:0.812(0.153~0.971、p=0.03)
  OTAS vs. NOTSS:0.716(-0.079~0.955、p=0.07)
  NOTECHS vs. NOTSS:0.516(-0.020~0.822、p=0.06)
・全査定者による各ツールのスコアの標準化標準偏差は次のとおりであった。
  NOTSS:0.024(95%CI:0.014~0.091)
  OTAS:0.060(0.034~0.225)
  ANTS:0.068(0.041~0.194)
  NOTECHS:0.072(0.043~0.206)
・評価ツール間ならびに評価者間の一貫性が最も高かったのは、それぞれANTSおよびNOTSSであった。

(ケアネット)