本年(2016年)7月に開催された第25回日本心血管インターベンション治療学会学術集会(CVIT2016)にて、オランダ・エラスムス大学 胸部疾患センター/アムステルダム大学の外海 洋平氏が「Can We Prevent Scaffold Thrombosis ?」と題し、これまでの研究データから、生体吸収性スキャフォールド(BVS)血栓症の原因、病態、予防方法について解説した。
BVS血栓症の発症率は、ABSORB-II、-III、-Japan、-Chinaなどをまとめたランダム化比較試験の2,330症例では、Early phaseで0.86%、Late phaseでは0.31%であった。また、All comers trialの7,043症例でみると、Early Phaseで1.08%、Late Phaseでは1.00%であった。
次に、血栓症の内訳について、Publishされた100例のケースレポート(2016年4月現在)のうち、イメージングデータを有する43例の分析結果として紹介した。Early PhaseのBVS血栓症では、malapposition、incomplete lesion coverage、under-deploymentが多く認められた。一方、Late(1ヵ月~1年)およびVery late Phase(1年以降の発症)のスキャフォールド血栓症では、malapposition、late discontinuity、peri-strut low intensity areaが多く認められた。
malappositionおよびincomplete lesion coverageでは、それ自体が引き金となって血栓を生じるケースが報告されている。under-deploymentについては、拡張不十分でストラットの密度が濃くなり、血流が障害され、血栓リスクが高くなる。late discontinuityは生体吸収の過程でプログラムされた現象であり、イベントへの関連は報告されていないが吸収過程のストラットが新生内膜でカバーされていない場合に血栓症リスクが高まる。一方、peri-strut low intensity areaについては血栓症との関連は明らかになっていない。
これらのイメージング所見から、BVS血栓の原因は病理学的に、(1)厚いストラットによりlaminar flow(層流)が障害され、endothelial shear stressが変化することで血小板が活性化し、血栓形成が促される。(2)PLLAの分解の過程で生じるプロテオグリカンが強い血栓原性を持ち、これが血流に接触することで血栓が生じる。(3)生分解の過程でストラット周囲に微小な炎症が起こり、血栓形成につながる可能性がある、の3つに分けられる。
BVS血栓症の予防対策としては、BVSに特化した留置戦略(BVS-specific implantation strategy)の使用が挙げられる。この戦略の内容は、(1)前拡張では、non compliantバルーンを用いreference vessel径まで広げる(2)バルーン拡張を造影で確認し、十分に拡張しているケースのみにBVSを用いる(3)reference vessel径と同じサイズのBVSを10~12気圧で留置する(4)後拡張では、non compliantバルーンを用い最大+0.5mmまで14~16気圧で広げる、といったものだ。実際、このストラテジーを用いることで血栓症が減ることが研究で明らかになっている。また、現在開発中の次世代のBVSでは、ストラット厚が薄くなっており、血栓症発症リスクの改善が期待される。
(ケアネット 細田 雅之)