Absorb生体吸収性冠動脈スキャフォールド(Bioresorbable vascular scaffold:BVS、Abbott Vascular社)の1年超の臨床結果が、JACC: Cardiovascular Intervention誌 2016年9月号に発表された。ABSORB II、ABSORB JAPANなどの複数の試験によって、実現性と安全性が証明されているが、中長期の臨床結果に関する報告が限られているうえ、先行研究は比較的単純な冠動脈病変のみを対象としていた。
医師主導型前向き単一施設単群試験
この試験は、医師主導型の前向き単一施設単群試験で、石灰化や完全閉塞、長病変、小血管径のような日常臨床でみられる病変に対するBVSの有用性を評価した。冠動脈へのインターベンションの既往がない新規の狭窄による非ST上昇型心筋梗塞、安定または不安定狭心症、無症候性虚血を対象とした。手技に関連した中長期的な臨床結果を評価した。主要評価項目を、心臓関連死亡、心筋梗塞、標的冠動脈病変の再灌流療法で定義された主要心血管イベントの発生とした。
249例の335冠動脈病変が対象、平均追跡期間622日
2012年9月~2015年1月までに249例の患者の335冠動脈病変が組み込まれた。患者1人当たりのスキャフォールドの数は1.79±1.15であった。IVUSなどの侵襲的な画像診断を39%に用いている。ACC/AHA分類のタイプB2/C病変(複雑病変)が38.1%に認められ、冠動脈病変の平均病変長が22.16±13.79mmであった。ステント留置後の初期獲得径は1.39±0.59mm、平均追跡期間は622日(四分位範囲:376~734)であった。
18ヵ月での主要心血管イベント、確定したステント血栓症は6.8%と1.9%
Kaplan-Meier法による18ヵ月時点の主要心血管イベント発生率が6.8%であった。18ヵ月時点の心臓死、心筋梗塞および標的冠動脈病変に対する再灌流療法施行の割合はそれぞれ1.8%、5.2%および4.0%であった。確定診断されたスキャフォールドに関連した18ヵ月時点の血栓症の割合は1.9%であった。報告者らは、複雑な患者および冠動脈病変に対するBVS留置後の有害事象発生率が、追跡期間が長期となっても許容できる程度であった一方で、早期の血栓症は確認されなかったという結論を示している。
(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)
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