団塊の世代の高齢化に伴い、がん患者の人口動態も大きく変わることが予想されており、それに対応できる専門医の配置などを含めた医療体制を整えていくことが求められている。とくに、首都圏近郊にはおよそ200万人の団塊の世代が居住しているといわれており、がん患者の地域分布は大きく変化していく可能性があると考えられている中で、乳がん患者データから将来のがん患者の人口動態変化を予測した、神奈川県立がんセンターの片山 佳代子氏らによる研究結果がPLOS ONE誌2016年8月17日号に発表された。
著者らは、神奈川県の地域がん登録データを活用し、2010年の乳がん罹患率と年齢群ごとの予測女性人口を基に、各地域における将来の乳がん患者数を推算した。その結果、全年齢の乳がん罹患率は、都市部においては2040年にかけて増加傾向になると予測されているが、その他の地域では減少傾向になるとみられている。しかし、65歳以上のみでみると、乳がんの罹患率はすべての地域で増加することが予測され、とくに都市部においては、2035年には2010年と比較して82.6%、2040年には102.2%増加するとみられている。
また、2010年の乳がん専門医1人当たりに対する乳がん患者数は64.3人であった。これは、都市部のみでみると、59.3人から2040年には77.7人に増加し、他の地域では減少することが予測されている。これらの結果から著者らは、とくに都市部において、乳がん患者の急速な増加とそれに伴う、治療の需要が増加することが示唆される、と記している。
(ケアネット 後町 陽子)