10月27日、アッヴィ合同会社は、進行期パーキンソン病治療薬レポドパ、カルビドパ水和物(商品名:デュオドーパ配合経腸用液)の発売を受け、都内でプレスセミナーを開催した。セミナーでは、パーキンソン病診療の現状のほか、患者さんが疾患による日常生活の不便さや将来への不安などを語った。
高齢化社会とパーキンソン病
はじめに服部 信孝氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院 脳神経内科 教授)が、「進行期のパーキンソン病の治療と展望」をテーマに講演を行った。
2017年で症状報告から200年になるパーキンソン病は、進行性の神経変性疾患である。疫学では1,000人当たり1~1.5人と推定され(国内患者数約15万人)、高齢になるほどその割合は上がり、10%が遺伝型と推定されるが、ほとんどが孤発型である。主な症状としては、振戦、筋固縮、姿勢反射障害がみられ、とくに無動や動作の緩慢は本症に特徴的であるという。進行すると著しく患者さんのADLやQOLを悪化させるために、超高齢化社会のわが国では、根絶が焦眉の急となっている。
パーキンソン病の診療
発症は、遺伝子、加齢、環境(たとえば農薬や頭部外傷)、生活因子が作用する多因子疾患と考えられている。また、本症の自然史としては、前駆症状に睡眠障害、自律神経症状、うつ・不安、嗅覚障害、疲労感などがみられるという。
治療では、ノルアドレナリン補充薬やMAO-B阻害薬、抗コリン薬などさまざまな治療薬が使用できるが、主にLドーパが使用される。しかし、Lドーパは半減期が短く、運動合併症状が出現しやすい点が指摘されている。また、パーキンソン病が進行すると、wearing-off と呼ばれる「オフ」状態と「オン」状態が交互に出現するようになり、「オフ」状態ではより動きが緩慢に、より強いこわばりが見られ、動作が困難となる。その結果、従来の経口薬では、胃や小腸での吸収が遅れ、有効血中濃度に薬剤がとどまらないために症状の改善ができないことが課題となっている。
病状が進行したら次の手は
こうした進行期での経口治療薬の課題を解決するために開発されたのが、デュオドーパ配合経腸用液である。
パーキンソン病の日内変動(wearing-off 現象)の改善に向け、患者さんに胃ろうを増設することで、専用ポンプとチューブを用い、持続的に薬剤の投与を行う。これにより「オフ」時間を減少させることが期待できるという。
デュオドーパ配合経腸用液の12週間投与の安全性、有効性などを評価した承認時試験(進行期のパーキンソン病患者31例)では、次のとおり報告されている。
・12週時の標準化した1日当たりの平均オフ時間の変化では、平均オフ時間がベースライン7.37時間であるのに対し、本剤では2.72時間だった。
・12週時の標準化した1日当たりの平均オン時間の変化では、ジスキネジア(不随意運動)ありの場合、平均オン時間がベースラインで1.12時間あるのに対し、本剤では0.12時間だった。ジスキネジアなしの場合、平均オン時間がベースラインで7.52時間であるのに対し、本剤では13.10時間だった。
・52週経過後のオフ時間に対する評価では、標準化した1日当たりの平均オフ時間がベースライン7.40時間であるのに対し、本症では3.12時間だった。
報告された副作用としては、胃ろう増設に関するものが多く、切開部痛、過剰肉芽組織、腹痛などがあったほか、機器の不具合(ポンプの異常やチューブの不具合)もレポートされている。
服部氏は、最後に「直接空腸に薬剤を届けることで、進行期パーキンソン病の運動症状に効果が期待される。また、長期のフォローアップでも安定した効果があり、薬剤を微調整できることが最大のメリットだと考えている。適応としては脳深部刺激療法より広く、機器の操作ができる認知能力があれば、パーキンソン病に見られる軽度認知機能障害(MCI)の患者さんにも適応可能である。今後は、使用経験を重ねることで患者クラスターを明確にするとともに、神経内科、消化器内科、外科との連携ができる組織作りが不可欠になる」と本剤への期待を語った。
(ケアネット 稲川 進)
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