テロメアの長さと、がんや非腫瘍性疾患の発症率の関連について、その因果関係と強さは不明である。今回、Telomeres Mendelian Randomization Collaborationによるメンデル無作為化研究から、テロメアが長いと数種のがんリスクを上げる一方で、心血管疾患など、いくつかの非腫瘍性疾患のリスクを下げる可能性があることがわかった。JAMA oncology誌オンライン版2017年2月23日号に掲載。
本研究では、生殖細胞系の遺伝子変異を操作変数として、疾患リスクとテロメア長の因果関係を評価した。データは、2015年1月15日までに発行されたGenomewide association study(GWAS)から、生殖細胞系の遺伝子変異を調べた非感染性疾患に関するデータを選択した。同定された163件の非感染性疾患に関するGWASのうち、103件でサマリーデータが入手可能であった。主要評価項目は、生殖細胞系の遺伝子変異によるテロメアの伸長の標準偏差(SD)当たりの各疾患のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)とした。
主な結果は以下のとおり。
・サマリーデータは35のがんと48の非腫瘍性疾患について利用可能で、症例は42万81人(疾患当たりの人数の中央値: 2,526人)、対照は109万3,105人(同:6,789人)であった。
・生殖細胞系列の遺伝子変異によるテロメア伸長は、部位特異的ながんのリスク増加とおおよそ関連していた。
・神経膠腫では、遺伝子変異によるテロメア伸長の1-SD変化当たりのOR(95%CI)が5.27(3.15~8.81)と最も高かった。そのほか、ORが高い順に以下のとおりで、稀少ながんや幹細胞分裂率の低い組織部位で関連が強かった。
低悪性度漿液性卵巣がん:4.35(2.39~7.94)
肺腺がん:3.19(2.40~4.22)
神経芽細胞腫:2.98(1.92~4.62)
膀胱がん:2.19(1.32~3.66)
悪性黒色腫:1.87(1.55~2.26)
精巣がん:1.76(1.02~3.04)
腎臓がん:1.55(1.08~2.23)
子宮内膜がん:1.31(1.07~1.61)
・非腫瘍性疾患については、冠動脈疾患(OR:0.78、95%CI:0.67~0.90)、腹部大動脈瘤(OR:0.63、95%CI:0.49~0.81)、セリアック病(OR:0.42、95%CI:0.28~0.61)、間質性肺疾患(OR:0.09、95%CI:0.05~0.15)を除き、遺伝子変異によるテロメアの伸長と精神疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、糖尿病、その他の非腫瘍性疾患のリスクとの関連を示すエビデンスはほとんどなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)