抗うつ薬はアルツハイマー病リスクを高めるのか

提供元:ケアネット

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公開日:2017/06/27

 

 アルツハイマー病(AD)は神経変性疾患であり、高齢者の記憶、思考、行動に対し、臨床的に明白で観察可能な障害を示す。アポリポ蛋白E(ApoE)ε4のような感受性遺伝子は、長期間AD診断のリスク増加と関連している。また、うつ病とAD発症リスク増加との関連を示唆する研究も報告されている。さらに、これまでの調査の知見より、高齢者に対する向精神薬使用において、混合効果も示唆されている。米国・フロリダ国際大学のShanna L. Burke氏らは、抗うつ薬の使用がうつ病や最終的なAD発症の危険性に与える影響について検討を行った。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2017年5月31日号の報告。

 国立アルツハイマー病センターのデータを活用して、認知障害のない1万1,443例を評価、検討した。うつ病、ApoE、AD診断、抗うつ薬使用の関連性を調査するため、生存分析を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・認知機能が正常な8,732例を対象に、調査を行った。
・抗うつ薬使用者の間で、ほとんどの場合、危険性は統計学的に有意ではなかった。
・1つのジェネリック医薬品は、保護的効果を示した(p<0.001)。
・最近のうつ病(2,083例、p<0.001)、生涯うつ病(2,068例、p<0.05)、ApoEε4キャリア(2,470例、p<0.001)は、AD発症との間に統計学的に有意な関係が認められた。

 著者らは「この知見は、抗うつ薬使用に関連するメカニズムが、最終的なADの危険性を減少させる可能性があることを示唆している。さらに、うつ病、ApoEε4、AD診断との関連を補強している。本研究は、うつ病などの潜在的に修正可能な心理社会的リスク因子を標的とすることにより、ADリスクを低下させる目的で介入を検討する、新たな文献に寄与するであろう」としている。

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(鷹野 敦夫)

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