マンモグラフィによる乳がん検診では、高濃度乳房で診断精度が低下することが問題視されている。一方、超音波検査は乳房構成に影響されずに腫瘍を描出できるため、マンモグラフィの弱点を補完できるものとして期待される。高濃度乳房の多い若年者(40代女性)の診断性向上を目指し、J-STARTが行われている。このJ-STARTの宮城県におけるコホートを解析した結果が、第25回日本乳癌学会学術総会において、東北医科薬科大学 乳腺・内分泌外科の鈴木 昭彦氏により発表された。
対象は、J-START登録者のうち、2007年10月から2009年9月に宮城県対がん協会が行った乳がん検診を受診した11,440名。登録者は、市町村ごとに割り付けを決める、クラスターランダム化により、通常のマンモグラフィ検診を受けるコントロール群(5,655名)と、マンモグラフィに超音波を加えて検診を行う介入群(5,783名)に割り付けられた。今回の研究では、乳がん検診におけるプロセス指標(感度、特異度、がん発見率)を乳房構成別に明らかにし、超音波検査の追加効果と有効性が検討された。
結果、要精検率は介入群が10.7%、コントロール群が6.8%で、介入群で高く、検診の不利益の増加が懸念された。がん発見率は、介入群で0.69%、コントロール群で0.39%と、いずれも介入群で高かった。感度は介入群で95%、コントロール群で76%。特異度は介入群89.2%、コントロール群で93.1%であった。
受診者の乳房構成を4段階(極めて高濃度、不均一高濃度、乳腺散在、脂肪性)に分類したところ、高濃度乳房(極めて高濃度、不均一高濃度)の割合は介入群、コントロール群ともにおよそ60%弱であり、両群間に大きな差はなかった。
高濃度乳房群(きわめて高濃度、不均一高濃度)の乳がん発見率は、介入群では0.71%、コントロール群では0.37%と、介入群で1.9倍になった。感度は介入群で25%上昇した。非高濃度乳房群(乳腺散在、脂肪性)の乳がん発見率は、介入群で0.67%、コントロール群で0.42%と、介入群で1.6倍となった。感度も介入群で17%上昇した。
超音波検査の追加により乳がん発見率は上昇し、その効果は高濃度乳房で高い傾向がみられた。非高濃度乳房群においても、一定の発見率向上効果がみられた。高濃度乳房対策の追加検査として、超音波にかかる期待は大きいものの、死亡率低下につながるか否かの検証が重要である、と鈴木氏は述べた。J-STARTの結果が待たれるところである。
(ケアネット 細田 雅之)