インスリン療法開始後のスタチンの影響

提供元:ケアネット

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公開日:2017/09/01

 

 スタチンは、糖尿病の新規発症リスクを増大させ、血糖コントロールに悪影響を及ぼす可能性があるが、2型糖尿病患者のインスリン療法開始後の血糖応答および転帰への影響は不明である。今回、英国・ノッティンガム大学のUchenna Anyanwagu氏らの研究で、通常治療中の2型糖尿病患者のインスリン療法開始後、スタチン併用者の短期血糖コントロールはあまり良好ではなかったものの、主要心血管イベントリスクは大幅に低かったことが報告された。Cardiovascular diabetology誌2017年8月22日号に掲載。

 本研究は、英国のHealth Improvement Network(THIN)UKデータベースを使用し、インスリン療法を開始した2型糖尿病患者1万2,725例での後ろ向きコホート研究。6、12、24、36ヵ月でのHbA1cの変化、死亡および3-point MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞)の5年リスクを、新たにインスリン療法を開始した患者において、スタチン使用者(1万682例)と非使用者(2,043例)で比較した。Cox比例ハザードモデルを用いて、異なるアウトカムのハザード比を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・コホートの平均年齢は58.7±14.0歳(男性51%)であり、ベースラインHbA1cの平均値は8.7±1.8%であった。
・インスリン療法開始後初期に、スタチン使用者に比べて非使用者でHbA1c値の大きな減少がみられ、その減少は短期で有意であった(6ヵ月で-0.34% vs.-0.26%、平均差:-0.09%、p=0.004)が、長期では有意ではなかった(3年で-0.31% vs.-0.35%、平均差:0.05%、p=0.344)。
・スタチン使用者と非使用者の心血管イベント(3-point MACE)は、それぞれ878件と217件であった(1,000人年当たり20.7 vs.30.9、調整ハザード比:1.36、95%CI:1.15~1.62、p<0.0001)。
・各スタチンでのサブグループ解析では、スタチン非使用者に比べて、すべてのスタチンで試験期間を通じてHbA1cが高かった(p<0.05)。
・アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチンにおける3-point MACEの調整ハザード比は、それぞれ0.82(95%CI:0.68~0.98)、0.67(同:0.55~0.82)、0.56(同:0.39~0.81)、0.78(同:0.60~1.01)であった。

(ケアネット 金沢 浩子)