アトピー性皮膚炎(AD)患者の皮膚には、疾患を重症化させる黄色ブドウ球菌が存在し、それは高度なコロニー形成によりヒト微生物叢のバランスを崩壊させる。ドイツ・ボン大学の岩本 和真氏らによる検討で、アトピー性皮膚炎患者ではTLR2を介した黄色ブドウ球菌由来シグナルの感知が、ランゲルハンス細胞(LC)で強く障害されていることが示唆された。著者は、「この現象は、アトピー性皮膚炎では免疫デビエイションと黄色ブドウ球菌の除去不足が影響している」とまとめている。Allergy誌オンライン版2018年4月19日号掲載の報告。
研究グループは、ADにおける自然免疫と獲得免疫のつなぎ役としての表皮樹状細胞の役割を明らかにするために、健康な人とAD患者の皮膚から新たに分離した器官モデルでLCと樹状細胞(IDEC)のTLR2の機能解析と表現型の比較を行った。
主な結果は以下のとおり。
・in situ分析において、AD皮膚の新鮮分離LCおよびIDECは、健康な皮膚のLCと比較して、TLR2の発現が減少していた。
・AD皮膚のLCは、IDECとは対照的に、in situで活性化の証拠が示されなかった。
・健康な皮膚のLCは、TLR2リガンドへの曝露により成熟し、遊走活性が増加した。
・AD皮膚のLCおよびIDECは、TLR2リガンドに反応せず、成熟しなかったが、高い自然遊走活性を示した。
・健康な皮膚およびAD皮膚のケラチノサイトは共に、TLR2発現が同程度であった。
・AD皮膚培養上清中のIL-6とIL-10の産生は、Pam3Cysによって低下した。
・IL-18の値は、健康な皮膚と比較しAD培養上清中で有意に高く、TLR2ライゲーションの影響はなかった。
(ケアネット)