Stage IV胃がん2次治療、ペムブロリズマブ対パクリタキセル(KEYNOTE-061)/ASCO2018 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2018/06/19 現在、Stage IV胃がんでは、国際的には1次治療としてフッ化ピリミジン系抗がん剤と白金製剤の併用、2次治療ではタキサン系抗がん剤のパクリタキセルと分子標的治療薬のラムシルマブの併用、あるいはパクリタキセル、ドセタキセル、塩酸イリノテカンの単剤が用いられている。 一方、ペムブロリズマブは、KEYNOTE-059試験で、2ライン以上の治療歴のあるPD-L1陽性の胃/胃・食道接部がんで良好な効果と安全性を示している。こうしたことを受けて、進行胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん患者を対象に2次治療でペムブロリズマブとパクリタキセルの効果を比較する第III相試験 KEYNOTE-061が実施された。その初回解析の結果を国立がん研究センター東病院消化器内科の設樂紘平氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表した。 対象はフッ化ピリミジン系抗がん薬と白金製剤の併用の1次治療を終了したStageIVの切除不能進行・転移性の進行胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん患者。登録患者はペムブロリズマブ(1回200mg)3週ごとの群とパクリタキセル(1日目、8日目、15日目に投与)4週ごとの群に割り付けられた。 登録患者では治療前検体で、22C3抗体を用いた免疫組織染色でPD-L1発現を測定。CPS(Combined Positive Score)1%以上をPD-L1陽性と規定した。主要評価項目はCPS1%以上の患者での全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)とし、副次評価項目は同じくCPS1%以上の患者での全奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)、安全性・忍容性とした。 登録総患者数は592例でペムブロリズマブ群とパクリタキセル群が各296例。このうちCPS1%以上はペムブロリズマブ群が196例、パクリタキセル群が199例だった。 主要評価項目であるPD-L1陽性でのOS中央値は、ペムブロリズマブ群で9.1ヵ月(6.2~10.7ヵ月)、パクリタキセル群で8.3ヵ月(7.6~9.0ヵ月)で、両群間に有意差はなかった(HR:0.82、95%CI:0.66~1.03、p=0.04205[片側])。またPFS中央値はペムブロリズマブ群で1.5ヵ月(1.4~2.0ヵ月)、パクリタキセル群で4.1ヵ月(3.1~4.2ヵ月)だった(HR:1.27、95%CI:1.03~1.57)。 副次評価項目では、ORRがペムブロリズマブ群で15.8%、パクリタキセル群で13.6%、DOR中央値がペムブロリズマブ群で18.0ヵ月(1.4~26.0ヵ月)、パクリタキセル群で5.2ヵ月(1.3~16.8ヵ月)。 Grade3以上の治療に伴う有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群が14.3%、パクリタキセル群が34.8%。Grade1以上の有害事象全体で主なものは、ペムブロリズマブ群が疲労感(15.8%)、食欲不振(8.2%)、パクリタキセル群が脱毛(40.2%)、疲労感(23.2%)。 また、Grade3以上の免疫関連有害事象や注射部位反応の発現率は、ペムブロリズマブ群が3.4%、パクリタキセル群が1.8%で、ペムブロリズマブ群で多かった免疫関連有害事象は甲状腺機能低下症(7.8%)、甲状腺機能亢進症(4.1%)となっていた。 OS、PFSは両群間で有意差は認められなかったが、サブグループで解析すると、PD-L1陽性患者でECOG PS0の場合、OS中央値はペムブロリズマブ群で12.3ヵ月(9.7~15.9ヵ月)、パクリタキセル群で9.3ヵ月(8.3~10.5ヵ月)であり(HR:0.69、95%CI:0.49~0.97)、PD-L1陽性でもCPS10%以上ではペムブロリズマブ群で10.4ヵ月(5.9~17.3ヵ月)、パクリタキセル群で8.0ヵ月(5.1~9.9ヵ月)と(HR:0.64、95%CI:0.41~1.02)ともにペムブロリズマブが良好な傾向を示した。 また、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)陽性の患者のみに限定すると、OSはペムブロリズマブ群が未達成、パクリタキセル群が8.1ヵ月(2.0~16.7ヵ月)であり(HR:0.42、95%CI:0.13~1.31)、ORRはペムブロリズマブ群が46.7%、パクリタキセル群が16.7ヵ月と、ペムブロリズマブ群で良好な傾向を示した。 設樂氏は「今回のデータからペムブロリズマブ単独療法でベネフィットを得られる患者集団の特定に向けた研究が必要である」との見解を示している。 ■参考 KEYNOTE-061試験(Clinical Trials.gov) ■関連記事 ASCO2018消化器がんオンサイトレポート 進行胃がん、ペムブロリズマブの治療効果は?KEYNOTE-059/ASCO2017 〔6月19日 記事の一部に誤りがありましたので、修正いたしました。〕 (ケアネット) 参考文献・参考サイトはこちら KEYNOTE-061試験(Clinical Trials.gov) 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 ASCO2018レポート 消化器がん【Upper GI】 学会レポート(2018/06/04) 進行胃がん、ペムブロリズマブの治療効果は?KEYNOTE-059/ASCO2017 医療一般(2017/06/16) 胃がん、ペムブロリズマブによる1次治療の結果(KEYNOTE-062)/ASCO2019 医療一般(2019/06/14) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 複雑CAD併存の重症AS、FFRガイド下PCI+TAVI vs.SAVR+CABG/Lancet(2024/12/20) 慢性心血管系薬のアドヒアランス不良、リマインドメッセージでは改善せず/JAMA(2024/12/20) “Real-world”での高齢者に対するRSVワクチンの効果(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)(2024/12/20) 切除不能肝細胞がん、アテゾ+ベバがTACEの代替となる可能性/ESMO Asia2024(2024/12/20) EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のアジア人データ(FLAURA2)/ESMO Asia2024(2024/12/20) 進行・再発子宮体がんの新たな治療選択肢/AZ(2024/12/20) 導入療法後に病勢進行のないHR+/HER2+転移乳がん1次治療、パルボシクリブ追加でPFS改善(PATINA)/SABCS2024(2024/12/20) 統合失調症発症後20年間における抗精神病薬使用の変化(2024/12/20) SGLT2阻害薬はがん発症を減らすか~日本の大規模疫学データ(2024/12/20) [ あわせて読みたい ] Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 医療関連感染症編(2020/02/10) Dr.林の笑劇的救急問答15<上巻>(2020/01/15) 一発診断(2019/12/11) Dr.林の笑劇的救急問答14<下巻>(2019/08/07) Dr.林の笑劇的救急問答14<上巻>(2019/03/15) 慢性便秘症特集まとめインデックス(2018/12/01)