Helicobacter pylori(H. pylori)の除菌は胃がんリスクを低下させるが、高齢者におけるデータは少ない。今回、香港大学のWai K. Leung氏らは、H. pylori除菌治療を受けた患者の大規模コホートおよびマッチさせた一般集団における胃がんリスクを年齢層別に比較した。その結果、とくに高齢者で、除菌治療後10年以上経過している群で、除菌治療と胃がんリスク低下が有意に関連していた。Gastroenterology誌2018年7月号に掲載。
著者らは、香港病院管理局データベースから2003年1月~2012年12月にクラリスロマイシンを含むH. pylori除菌治療を受けた患者を同定した。このコホートにおける胃がん発症率について、香港がん登録から2003~14年における年齢・性別をマッチさせた集団の胃がん発症率から予測された地域一般集団の発症率を比較した。主要アウトカムは、一般集団での予測された胃がん発症率に対する除菌治療コホートでの胃がん発症率。40歳未満、40~59歳、60歳以上の3群に分けて分析した。
主な結果は以下のとおり。
・追跡期間(中央値7.6年)中に、除菌治療を受けた7万3,237例のうち、200例(0.27%)で胃がんが発症した。
・マッチさせた一般集団と比較し、除菌治療を受けた60歳以上の群では胃がんリスクが有意に低かった(標準化発生比[SIR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.69~0.97、p=0.02)が、残りの2群ではそうではなかった。
・除菌治療からの期間(5年未満、5~9年、10年以上)で分析した場合、除菌後10年以上において、40~59歳の群(SIR:0.32、95%CI:0.08~0.88、p=0.04)および60歳以上の群(SIR:0.42、95%CI:0.42~0.84、p=0.02)で、一般集団より胃がんリスクが有意に低かった。
(ケアネット 金沢 浩子)