米国は、労働者の有給休暇取得を保証していない唯一の先進経済国である。実証研究によると、有給休暇は幸福感やストレスと関連しているといわれているが、有給休暇とうつ病との関連性については研究されていない。米国・ノースイースタン大学のDaniel Kim氏は、45~52歳の男女の代表的な労働者3,380例をサンプルとした1979年の全国縦断調査(National Longitudinal Survey of Youth 1979)を用いて、有給休暇の取得がうつ病を予防するかについて検討を行った。Scandinavian journal of work, environment & health誌オンライン版2018年11月7日号の報告。
50歳時にうつ病評価尺度簡易版(CES-D-SF)で測定したうつ病に対する、40歳時の年次有給休暇日数の影響について、多変量線形回帰モデルとロジスティック回帰モデルを用いて推定した。モデルは、人口統計、社会経済的要因、身体的健康状態、週の労働時間、個々の固定効果で調整を行った。
主な結果は以下のとおり。
・女性において、有給休暇が10日間追加されるごとに、うつ病オッズが29%低下した(オッズ比[OR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.55~0.92、p=0.01)。この関連は、男性では認められなかった。
・線形回帰モデルでは、男女ともに関連が認められなかった。
・10日間の有給休暇ごとに、白人女性ではうつ病オッズが36%低下し、2人以上子供がいる女性ではうつ病オッズが38%低下した。
著者は「本研究は、有給休暇とうつ病との関連性を検討した最初の報告であり、2人以上の子供がいる白人女性において、有給休暇取得によるうつ病予防効果が示唆された。この関連性の因果関係が正当であり、全年齢の成人女性労働者に共通した影響をもたらすと仮定すると、平均有給休暇10日間の場合、毎年56万8,442件の女性のうつ病発症が回避され、毎年29億4,000万米ドルのコスト削減につながる可能性が示唆された。有給休暇取得の権利を与える政策は、米国の女性労働者の健康および経済的負担に対し好影響をもたらす可能性がある」としている。
■関連記事
うつになったら、休むべきか働き続けるべきか
職場ストレイン、うつ病発症と本当に関連しているのか
長時間労働やシフト作業は認知症発症に影響するか
(鷹野 敦夫)