日本人生活保護受給者における精神病床入院の地域差に関する研究 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2018/12/10 日本の生活保護受給者数は約200万人、年間医療扶助費は約1.8兆円に達しており、医療扶助費のうち15%は、精神疾患による入院医療費となっている。そして、さまざまな地域で精神科病床に長期間入院している患者に対する退院促進の取り組みが行われている。しかし、都道府県ごとに、どの程度の生活保護受給者が精神科病床に入院しているか、といった基礎的な統計資料は、これまで不十分であった。東京都医学総合研究所の奥村 泰之氏らは、厚生労働省による医療扶助実態調査を活用して分析を行った。Journal of Epidemiology誌オンライン版2018年9月22日号の報告。 2014年5月、2015年5月、2016年5月の厚生労働省による医療扶助実態調査を活用して分析を行った。対象は、2016年6月審査分の生活保護受給者のレセプトより、2016年5月に精神病床に入院していた4万6,559例とした。年齢、性別で標準化された精神科病床の入院患者数は、都道府県ごとに、直接標準化法および間接標準化法を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。 ・人口10万人当たりの精神科病床入院中の生活保護受給者数は36.6例であった。 ・都道府県別では、人口10万人当たりの精神科病床入院中の生活保護受給者数が最も多い長崎県(83.3例)と最も少ない長野県(12.0例)との間に約7倍の差が認められた。 ・重回帰モデル分析では、人口10万人当たりの精神科病床数が多い地域は、精神科病床入院中の生活保護受給者数が多い傾向が認められた(R2=28%)。 ・また、人口1,000人当たりの生活保護受給者数が多い地域は、精神病床入院中の生活保護受給者数が多い傾向が認められた(R2=23%)。 ・感度分析では、別の調査年およびサブグループからのデータにおいても、同様の所見が示唆された。 著者らは「地域移行の施策が導入されてきた後、精神科病床へ長期入院となる都道府県ごとの生活保護受給者数には、最大で約8倍の差が認められた。都道府県の差を説明する主な要因は、人口当たりの精神科病床数と生活保護受給者数であることが明らかになった。政策立案者は、地域差が生じる合理性を評価し、その差を小さくする施策を検討することが求められる」としている。 ■関連記事 日本における精神科病床への新規入院患者の在院日数に関する研究 統合失調症と双極性障害における退院後早期の精神科受診と再入院リスクに関する研究 せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているか (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Okumura Y, et al. J Epidemiol. 2018 Sep 22. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 重症βサラセミアへのbeti-cel、89%が輸血非依存性を達成/Lancet(2024/11/25) 手術目的の入院患者の有害事象、多くは予防可能/BMJ(2024/11/25) 高リスクIgA腎症へのエンドセリンA受容体拮抗薬の重度蛋白尿改善効果は確定(解説:浦信行氏)(2024/11/25) 境界性パーソナリティ障害に非定型抗精神病薬は有効なのか〜メタ解析(2024/11/25) 非肥満2型糖尿病患者の心血管障害へのSGLT2阻害薬の効果は/京大(2024/11/25) EGFR陽性NSCLC、CRT後のオシメルチニブは日本人でも良好(LAURA)/日本肺癌学会(2024/11/25) 1日わずか5分の身体活動の追加が血圧低下に効果的(2024/11/25) 便秘は心臓病のリスクを高める?(2024/11/25) [ あわせて読みたい ] Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07) 薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30) 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24) 柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24) 松戸市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/20) シネマセラピー ~シネマにみるメンタルヘルス~(2013/04/26)