抗うつ薬は、最も一般的に使用されている精神疾患治療薬の1つである。しかし、抗うつ薬治療において、薬剤のクラス間または各物質に関連する交通事故リスクへの影響については、ほとんど知られていない。韓国・ソウル大学校病院のBo Ram Yang氏らは、道路交通事故における抗うつ薬使用と死亡リスクとの関連について調査を行った。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2018年11月24日号の報告。
2010年1月~2014年12月までの健康保険データベースにリンクした韓国国道交通機関データベース(Korean national road traffic authority database)を用いて、ケース・クロスオーバーデザインによる検討を行った。調査対象は、交通事故で死亡し、事故の1年以内に抗うつ薬を処方されていた韓国人ドライバー。ハザード期間およびマッチさせた4つの対照期間における抗うつ薬の処方状況について、他の薬剤の使用で調整した後、条件付きロジスティック回帰分析を用いて比較を行った。処方箋の数より、抗うつ薬の処方動向を調査した。使用傾向が増加している薬剤およびケース・クロスオーバーオッズ比(OR)が有意に高い薬剤には、ケース・ケース・タイム・コントロールデザインを適用した。
主な結果は以下のとおり。
・抗うつ薬を使用していたドライバー1,250例において、30日ハザード期間中にリスクの増加が認められた(調整OR:1.30、95%CI:1.03~1.63)。
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)およびセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)には有意なリスクが認められたが、三環系抗うつ薬では認められなかった。
・しかし、すべての抗うつ薬、SSRI、SNRI、エスシタロプラム、デュロキセチンの関連性は、使用傾向を調整した後、有意ではなくなった。
・パロキセチンとミルナシプランはリスク増加と関連が認められたが、それらの使用率に明らかな増加はみられず、ミルナシプランの結果には適応による交絡が影響を及ぼした可能性がある。
著者らは「抗うつ薬の処方や使用の傾向を考慮すると、パロキセチンの使用は、致死的な交通事故リスクを増加させる」としている。
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(鷹野 敦夫)