眼圧上昇は、世界的にも不可逆的失明の主因とされる、緑内障の大きなリスク因子である。眼圧上昇の潜在的な一因として大気汚染が示唆されているが、これまでその関連を示す研究はほとんどされていない。米国・ハーバード大学のJamaji C. Nwanaji-Enwerem氏らは、米国退役軍人省のNormative Aging Studyにおける高齢男性のデータを解析し、生物学的に酸化ストレスの影響を受けやすい人では、大気中のブラックカーボンが眼圧上昇の危険因子になりうることを明らかにした。著者は、「さらなる研究で今回の結果が確認された場合、大気中のブラックカーボンの曝露や生理的な酸化ストレスをモニタリングすることで、眼圧に影響を及ぼす疾患の発症、進行を防ぐことができるかもしれない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年11月8日号掲載の報告。
研究グループは、地域在住高齢者の眼圧と大気中のブラックカーボンへの長期曝露との関連を調査する目的で、2017年10月18日~2018年3月22日の期間のデータを分析した。対象者は、Normative Aging Studyのデータに含まれるニューイングランド州のすべての住民男性であった。
解析対象は高齢者男性419例で、2000年1月1日~2011年12月30日の間に追跡調査が計911回行われた。眼圧はゴールドマン圧平眼圧計で測定し、参加者の住所地における1年間のブラックカーボン曝露レベルについて、時空間モデルを用いて算出した。
ブラックカーボンの毒性と関連する3つの経路、すなわち内皮機能、酸化ストレスおよび金属曝露に関する対立遺伝子のリスクスコアを、独立して開発された遺伝子スコアアプローチを用いて算出し、ブラックカーボンへの曝露、対立遺伝子リスクスコア、そして眼圧との関連について線形混合モデルを用いて検討した。
主な結果は以下のとおり。
・参加者は男性419例(平均[±SD]年齢:75.3±6.9歳)であった。
・1年間のブラックカーボンによる平均[±SD]曝露量は0.51±0.18μg/m3だった。
・平均[±SD]眼圧は左眼14.1±2.8mmHg、右眼14.1±3.0mmHgだった。
・追跡調査911回中、それぞれの対立遺伝子リスクスコアは高く示され、内皮機能は520回(57.1%)、金属曝露は644回(70.7%)、酸化ストレスは623回(68.4%)であった。
・補正後線形混合モデルによる解析の結果、酸化ストレスの対立遺伝子リスクスコアが高い人(β=0.36、95%信頼区間[CI]:0.003~0.73)は、低い人(β=-0.35、95%CI:-0.86~0.15)に比べ、ブラックカーボンと眼圧との関連が大きかった。
(ケアネット)