がん患者と一緒に暮らす配偶者において、心理社会的健康への悪影響だけでなく死亡リスクも増加する可能性が指摘されている。今回、東北大学の中谷 直樹氏らは、日本人集団の大崎コホート2006研究で、配偶者のがん診断と死亡率との関連について前向きコホート研究デザインにて検討した。その結果、配偶者のがん診断に起因する死亡率が診断後早期に有意に高いことが示され、がん治療の集学的チームが配偶者の死を防ぐために重要である可能性が示された。Acta Oncologica(Stockholm)誌オンライン版2019年1月21日号に掲載。
本研究の対象は、2006年12月に宮城県大崎市在住の40歳以上の住民。配偶者ペアの同定は大崎市の世帯番号および続柄を利用した。また、アンケート調査後の配偶者のがん診断は地域がん登録情報で確認した。住民基本台帳の調査により、対象者の死亡および異動を最大4年間追跡した後、Coxの比例ハザード回帰を用いて全死因死亡のハザード比(HR)を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・2万5,938人(1万2,969組)を特定し、分析に組み入れた。アンケート調査後、計1,308人(5.0%)が、がんと診断された配偶者と同居していた。
・配偶者ががんと診断された人における、されていない人と比べた全死因死亡率の多変量HRは1.35(95%信頼区間[CI]:0.99~1.83、p=0.055)で、配偶者のがん診断と全死因死亡率とに関連は認められなかった。
・一方、配偶者のがん診断からの期間別に解析したところ、配偶者のがん診断から1年以内における全死因死亡率が有意に増加することが示された(HR:2.18、95%CI:1.44~3.30、p<0.01)。
(ケアネット 金沢 浩子)