若年者での運動負荷試験を施行中、極度な高血圧が観察されることは珍しくない。また、アスリートは運動能力が高いため、ピーク時に血圧が上昇することが多い。この運動中の高血圧がどのような意味をもつのかはわかっておらず、どのようなフォローが必要なのかも疑問である。イタリア・ローマのStefano Caselli氏らヨーロッパのグループが、この問題についてEuropean Heart Journal誌オンライン版1月1日号に報告している。
平均年齢26歳のアスリートを運動時高血圧群と正常血圧群で比較
いずれも正常血圧で、運動時高血圧を有するアスリート141例(運動時高血圧群)と、性別、年齢、体の大きさとスポーツの種類でマッチさせた運動時も正常血圧のアスリート141例(正常血圧群)における高血圧症の発症率を比較した。平均6.5±2.8年のフォローアップ期間中、心イベントの発生はなかったが、全体で24例(8.5%)が高血圧症と診断された。
平均6.5年のフォローアップ期間中に運動時高血圧群では19例が高血圧症発症
うち19例は運動時高血圧群であり、正常血圧群で高血圧症と診断されたのは5例であった(p=0.003)。カプランマイヤー分析の結果、運動時高血圧群で高血圧発症率がより高いことが示された(ログランクχ2乗検定によるp=0.009)。Cox比例ハザードモデルによる多変量解析でも、ベースラインにおける安静時血圧と運動時高血圧が高血圧症に対して最も有力な予測因子であった(χ2乗値:30.099、p<0.001)。とくに運動時高血圧は、高血圧症発症に対するハザード比が3.6(95%信頼区間:1.3~9.9)であった。
フォローアップ期間中、運動能力、エコーにおける心臓の形態学的および機能的評価に有意な違いは認められなかった。
運動時高血圧を有すると高血圧症発症の可能性が高い
このスタディーは、高度なトレーニングを受け、血圧が正常なアスリートでみられる運動時の極端な血圧の上昇が、中期的な期間における高血圧症の発生を予測することを示した。若年者と言えど、運動時高血圧を示した場合、将来的な高血圧を想定したフォローアップが必要なのかもしれない。
(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)
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