1年半以上にわたり続けられてきた「医師の働き方改革」の議論がいよいよ大詰めを迎えている。この間、学会や関連団体は提言を行い、特例の上限時間に反対を唱える医師有志らによる署名活動も巻き起こっている。実際に、現場で働く医師1人ひとりは現行の枠組み案をどのように受け止めているのか。ケアネットでは、CareNet.comの医師会員を対象にアンケート調査を実施し、1,000人にその時間外労働の実情や意見を聞いた。
厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」は2019年3月13日、20回目となる検討会を開催し、月内にとりまとめ予定の報告書案を提示した。この報告書案には、勤務間インターバル9時間・当直明けは18時間確保、それらが難しい場合には随時代償休息(時間単位での休息)を付与といった健康確保措置のほか、大きく3つの枠組みを設けた時間外労働の上限規制案が盛り込まれている:
・原則「月45時間・年360時間以下」
・臨時的な必要がある場合に「月100時間未満・年960時間以下」
・特例(指定医療機関および集中的な技能習得が必要な医師)では「月100時間未満・年1,860時間以下」
アンケートは、2019年3月1~13日、ケアネット会員の医師を対象にインターネット上で実施した。回答者の内訳は、年代別では30代が31%で最も多く、40代(26%)、50代(23%)、60代(11%)と続く。病床数別では、200床以上が64%で最も多く、以下、0床(13%)、100~199床(12%)、20~99床(5%)、1~19床(3%)。
このうち、現在提案されている上限規制案に、賛成か、反対かを尋ねたところ、48%が「賛成(どちらかといえば賛成を含む)」と答えた。その理由として、「現実的な内容で、今後段階的に改善を図る上で適当な水準」「規制しないと医師が体力的に疲弊する」などスタートとしては妥当とするコメントが多くみられた。一方、「反対(どちらかといえば反対を含む)」(52%)と答えた医師からは、「規制を作ることには賛成だが、時間枠が広すぎて反対」「特例とはいえ、過労死基準をはるかに超える上限規制は意味がない」など、特例の上限として提案されている“年1,860時間”に対する懸念の声が多くあがっている。
“年1,860時間”は過労死基準を超えて長すぎるために「反対」とする意見がある一方で、「人員が足りず時間外を制限されてしまっては成り立たない」ために反対する声もみられた。現在の時間外労働について聞いた質問では、年1,860時間を超える時間外労働をしていると答えた医師は6.5%。現実問題として負担の集中している現場があることが浮き彫りとなり、時間外規制だけにとどまらない、偏在解消や受診行動を変えるためのアプローチなど、実効性のある対策を求める声があがっている。
また、これらの時間外規制には、アルバイトの勤務時間を含むとされているが、75%の医師がこのことを「知らなかった」と回答。「若手のバイト医師がいなくては病院が回らない」など、アルバイトが制限されることを危惧する意見が上がっている。厚労省では現在、一般労働者の副業・兼業の労働時間管理についての検討がスタートしている。医師においても、規制の適用が開始される2024年4月までを目途に、副業の労働時間管理や健康確保措置の在り方が検討される見通しとなっている。
今回の調査の詳細と、具体的なエピソードやコメントはCareNet.comに掲載中。
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(ケアネット 遊佐 なつみ)