ノバルティス ファーマ株式会社は、2019年3月26日、「再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)および再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」を対象として、国内で初となるキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)の製造販売承認を取得した。
チサゲンレクルユーセルは、患者自身のT細胞を遺伝子導入により改変し、体内に戻すことで、CD19発現B細胞性の腫瘍(B-ALLとDLBCL)を認識して攻撃する新しいがん免疫細胞療法。チサゲンレクルユーセルによる治療は、継続的な投与を必要とせず、投与は一度のみとなる(単回投与)。
今回の承認は、再発または難治性のCD19陽性のB-ALLとDLBCLを対象とした、CAR-T細胞療法の国際多施設共同第II相試験(ELIANA試験、JULIET試験)の結果に基づいている。
再発または難治性のCD19陽性B-ALLの小児及び若年成人患者を対象としたELIANA試験では、主解析時点までに92例が登録され、75例がチサゲンレクルユーセルの投与を受けた。主要評価項目とされた全寛解率(完全寛解[CR]または血球数回復が不十分な完全寛解[Cri])は、中間解析時点で82.0%(41/50例)であった。また主解析時点で、寛解を達成した患者における寛解持続期間の中央値は未到達(追跡期間中央値9.92ヵ月)であり、持続した寛解が得られている。チサゲンレクルユーセルが投与された患者で高頻度に認められた副作用はサイトカイン放出症候群(CRS)(77%、58/75例)であり、重篤なCRSは63%(47/75例)に発現したが、死亡に至ったCRSはなかった。高頻度に認められたその他の副作用(承認時までの集計)は、低γグロブリン血症(39%)、発熱性好中球減少症(27%)、発熱、低血圧(各25%)、頻脈(24%)、脳症(21%)、食欲減退(20%)等であった。
それまでの治療に難治性あるいは、再発を繰り返して治療選択肢が限られた、再発または難治性のCD19陽性DLBCLの成人患者を対象としたJULIET試験では、追加解析時点までに165例が登録され、111例がチサゲンレクルユーセルの投与を受けた。主要評価項目とされた奏効率(完全奏効[CR]または部分奏効[PR])は、中間解析時点で58.8%(30/51例)であった。また、奏効が得られた患者における奏効持続期間の中央値は未到達(追跡期間中央値13.9ヵ月)であり、持続した奏効が得られている。チサゲンレクルユーセルが投与された患者で高頻度に認められた副作用は、CRS(58%、57/99例)であり、重篤な事象のCRSは29%(29/99例)に発現したが、死亡に至ったものはなかった。高頻度に認められたその他の副作用(承認時までの集計)は、発熱(25%)、低血圧(21%)等であった。
チサゲンレクルユーセルの治療を行う医療機関は、白血球アフェレーシスによる患者の細胞の採取、細胞の調製・凍結、同薬投与後に起こるサイトカイン放出症候群(CRS)や神経系事象といった副作用の管理などを綿密に行うことができる医療機関に限られる。また、今回の承認にあたって、厚生労働省より「緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍及び造血幹細胞移植に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで、サイトカイン放出症候群の管理等の適切な対応がなされる体制下で本品を使用すること」との承認条件が付与されており、今後、より具体的な要件が示される。
チサゲンレクルユーセルは、2017年8月、米国において、小児および若年成人の再発・難治性B-ALLを適応症として、初めて承認を取得したCAR-T細胞療法であり、2018年5月に2つ目の適応症である成人のDLBCLに対する承認を取得した。また、2018年8月、欧州において、小児・若年成人のALLおよび成人のDLBCLに対する販売承認を取得した。その後、カナダ、スイス、オーストラリアでも同様の適応で承認を取得している。
(ケアネット 細田 雅之)