がん治療薬の開発が進んでいるが、一方で予防に対する研究も活発である。中国・安徽医科大学のWanshui Yang氏らは、全粒穀物や食物繊維の摂取量増加が、肝細胞がん(HCC)の素因として知られるインスリン抵抗性、高インスリン血症および炎症のリスク低下と関連していることから、これらの長期摂取によりHCCのリスクが低下するのではないかと仮定し、その関連性を米国の2つのコホート研究を基に解析した。その結果、全粒穀物および、おそらくシリアル繊維とふすまの摂取量増加は、米国成人のHCCのリスク低下と関連していることが示されたという。著者は、「今回の知見を再現し、他の人種・民族あるいは高リスク集団におけるこれらの関連性を調べ、根本的なメカニズムを解明するためには、今後、B型およびC型肝炎ウイルス感染を考慮したさらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年2月21日号掲載の報告。
研究グループは、米国のNurses' Health StudyおよびHealth Professionals Follow-up Studyから計12万5,455例について解析した。
被験者は、全粒穀物、その成分であるふすまと胚芽、および食物繊維(シリアル、果物、野菜)の摂取量について、食事摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)を用いて4年ごとに調査を受けていた。これらの摂取量とHCCとの関連について、Cox比例ハザード回帰モデルを用い、HCCの既知のリスク因子を調整後の多変量ハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を推算し評価した。
主な結果は以下のとおり。
・平均追跡期間24.2年、被験者12万5,455例(女性7万7,241例、男性4万8,214例、平均年齢63.4歳)中、HCC患者141例を確認した。
・全粒穀物の摂取量増加は、HCCのリスク低下と有意に関連していた(最高三分位vs.最低三分位のHR:0.63、95%CI:0.41~0.96、傾向p=0.04)。
・全ふすまの摂取量増加は、有意ではないもののHCCのリスク低下との関連が観察された(HR:0.70、95%CI:0.46~1.07、傾向p=0.11)。胚芽では関連はみられなかった。
・シリアル繊維の摂取量増加は、有意ではないもののHCCのリスク低下と関連していた(HR:0.68、95%CI:0.45~1.03、傾向p=0.07)。果物や野菜の繊維では関連はみられなかった。
(ケアネット)