日本と米国における認知症ケア選択~横断的観察研究

提供元:ケアネット

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公開日:2019/08/15

 

 日本では、認知症者ができるだけ長く社会に関わっていけるようにするため、国策として「dementia-friendly initiative」を導入した。しかし、家族の介護負担を軽減するために特別養護老人ホームへの入所を選択する人もいる。政策を決定するうえで、介護する場所に対する中年の好みを理解し、それに影響を及ぼす要因を特定することは、「dementia-friendly initiative」の促進に役立つ。東京都医学総合研究所の中西 三春氏らは、認知症を発症した際の、日本と米国の中年におけるケアの好みについて調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年7月7日号の報告。

 40~70歳の日本人104人、日系米国人93人、非アジア系米国人104人の合計301人を対象に、インターネットアンケート調査を行い、横断的観察研究を実施した。対象者は、ケアや管理が必要な認知症を発症したという仮定の状況に基づき、アンケートに回答した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象者のケアの好みは、特別養護老人ホームでのケア(29.9%)、専門家によるケア(19.6%)、家族によるケア(17.6%)、病院でのケア(11.3%)の順であった。
・日本人は、日系および非アジア系米国人と比較し、専門家による在宅ケアを好む傾向が有意に低かった(調整オッズ比:0.28、95%信頼区間:0.10~0.75)。
・ケアの好みにおける民族間の違いは観察されなかった。

 著者らは「日本人中年の専門家による在宅ケアへのニーズの低さは、日本特有の長期および認知症介護システムに影響されている可能性がある。政策を決定する際には、認知症者の家族にとってより利用しやすい専門家による在宅ケアサービスを検討すべきである」としている。

(鷹野 敦夫)