心疾患と認知症の関連が疫学研究で示唆されているが、血清NT-proBNP(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド)値と認知症の関連を評価した前向き研究はほとんどない。今回、九州大学の永田 拓也氏らが久山町研究で調べたところ、血清NT-proBNPが300pg/mL以上では54pg/mL以下に比べて認知症リスクが2.5倍高いことが示された。Journal of the American Heart Association誌2019年9月3日号に掲載。
本研究の対象は、地域在住の認知症ではない60歳以上の日本人高齢者1,635人(女性57%、平均年齢±SD:70.8±7.7歳)で、10年間追跡調査した。血清NT-proBNP値を4つのカテゴリー(54pg/mL以下、55~124pg/mL、125~299pg/mL、300pg/mL以上)に分けて評価した。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・追跡期間中、認知症全体の発症が377人、アルツハイマー病が247人、血管性認知症が102人に認められた。
・年齢・性別の調整後、認知症全体の発症率は1,000人年当たり31.5で、血清NT-proBNP値の低いカテゴリーから順に16.4、32.0、35.7、45.5と有意に増加した(傾向のp<0.01)。
・交絡因子の調整後、血清NT-proBNPが300pg/mL以上では54pg/mL以下より、認知症全体のリスクが有意に高かった(ハザード比:2.46、95%CI:1.63~3.71)。
・アルツハイマー病や血管性認知症においても同様のリスクが認められた。
・既知の危険因子による認知症予測モデルに血清NT-proBNPを組み込むことによって、予測能力が有意に改善した(c統計量:0.780~0.787、p=0.02、NRI:0.189、p=0.001、IDI:0.011、p=0.003)。
(ケアネット 金沢 浩子)