統合失調症患者の半数以上が、生涯に自殺を試みる。より良い洞察力は、機能により良い影響をもたらすが、自殺企図の増加とも関連している。洞察力と自殺企図との関連を明確にするため、フランス・ベルサイユ大学のMickael Ehrminger氏らは、構造方程式モデリングを用いて検討を行った。Journal of Clinical Medicine誌2019年8月10日号の報告。
統合失調症スペクトラム障害患者の洞察力、QOL、うつ、自殺企図を、ベースラインおよび12ヵ月後の時点で測定を行った。これらの関連は、クロルプロマジン換算量、陽性症状、陰性症状、一般精神病理によりコントロールした潜在差スコアモデルを用いて調査した。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者738例中、370例が試験を完了した。
・洞察力のベースラインレベルは、自殺企図の変化を予測した。しかし、自殺企図のベースラインレベルは、洞察力の変化を予測しなかった。より良い洞察力は、自殺企図の根底にあり、その悪化を予測することが示唆された。
・より良い洞察力→QOL不良→うつの増加→自殺企図の増加という時系列が示唆された。
著者らは「より良い洞察力は、統合失調症患者のQOL、うつ、自殺企図の悪化を予測した。本知見は、自殺企図に対する洞察力の長期的な影響を理解するうえで重要である。うつや自殺予防のモニタリングなしで、洞察力をターゲットとした介入を提案すべきではないと考えられる」としている。
(鷹野 敦夫)