皮膚科におけるディープラーニング技術の活用報告が相次いでいる。今回発表されたのは、非黒色腫皮膚がんの予測モデル開発に関する研究報告で、台湾・台北医学大学のHsiao-Han Wang氏らがディープラーニング技術を活用し、高リスク集団を捉えることが可能な精度の高い予測モデルを開発した。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年9月4日号掲載の報告。
研究グループは、アジア人集団において、UV曝露または特異的病変に関する情報なしで、大規模で多次元的な非画像医学情報をベースとした非黒色腫皮膚がんのリスク予測モデルを、ディープラーニングを活用して開発する研究を行った。
1999年1月1日~2013年12月31日の台湾全民健康保険研究データベースから、200万例のサンプル患者を無作為抽出してデータベースを構築。初発のがんとして非黒色腫皮膚がんと診断された患者群と、非がん無作為対照群を抽出して解析した。リスク予測モデルにはディープラーニングアプローチである畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network:CNN)が使われ、3年間の臨床診断情報、医療記録、経時的な情報を使用して、翌年までの特定の患者の皮膚がんリスクを予測した。モデルの重要・確定因子を調査するため、段階的な特徴選択も行われた。統計的解析は2016年11月1日~2018年10月31日に実施。モデルの性能を感度、特異度、AUROC曲線を用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・患者群1,829例(女性923例[50.5%]、平均年齢65.3歳[SD 15.7])と、対照群7,665例(女性3,951例[51.5%]、平均年齢47.5歳[SD 17.3])が含まれた。
・時間統合型の特徴マトリクス(time-incorporated feature matrix)として連続的な診断情報と処方情報を用いた、非黒色腫皮膚がんの1年発生リスクの予測モデルは、AUROC 0.89(95%信頼区間[CI]:0.87~0.91)、平均感度83.1%(SD 3.5%)、平均特異度82.3%(SD 4.1%)を達成した。
・予測のための識別特性因子は、皮膚上皮内がん(AUROC:0.867、-2.80%)およびほかの慢性併存疾患(骨の変性[AUROC:0.872、-2.32%]、高血圧[0.879、-1.53%]、慢性腎不全[0.879、-1.52%]など)であった。
・トラゾドン、アカルボース、全身性抗真菌薬、スタチン、非ステロイド性抗炎症薬、サイアザイド系利尿薬などの薬剤は、このモデルにおける最上位の識別特性であった。
・上記の薬剤はいずれも、個別に除外した場合にAUROCが1%超減少した(トラゾドン[AUROC:0.868、-2.67%]、アカルボース[0.870、-2.50%]、全身性抗真菌薬[0.875、-1.99%]など)。
(ケアネット)