神経認知障害は、寛解期の双極性障害患者において多く報告されており、機能障害に影響を及ぼしている。しかし、これらの障害に関する縦断的な軌跡は、よくわかっていない。これまでの研究で、中年期双極性障害患者では神経認知障害が安定化する傾向が示唆されていたが、この状態は初期または後期で悪化する可能性がある。米国・ハーバード大学T. H. Chan公衆衛生大学院のAlejandro Szmulewicz氏らは、発症初期または後期の双極性障害患者における神経認知パフォーマンスの縦断的分析を行うため、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2019年9月21日号の報告。
双極性障害の診断から1年以内または後期の双極性障害患者を対象に、縦断的な神経認知パフォーマンスを検討した研究について、包括的なメタ解析を行った。フォローアップ期間中の神経心理学的スコアの変化に対する標準化平均差(SMD)のプールされた効果を、ランダム効果モデルを用いて推定した。また、フォローアップ期間、気分の状態、薬理学的負荷などの効果モデレーターについても調査した。
主な結果は以下のとおり。
・分析対象の研究数は、初期双極性障害8件(284例)、後期双極性障害4件(153例)であった。
・初期(SMD:0.12、95%CI:-0.06~0.30、平均フォローアップ期間:17ヵ月)および後期(SMD:-0.35、95%CI:-0.84~0.15、平均フォローアップ期間:33ヵ月)の双極性障害患者において、神経認知機能の悪化を示唆するエビデンスは観察されなかった。
・有意なモデレーターも観察されなかった。
著者らは「中年期双極性障害患者および遺伝的リスクを有する人での所見とともに評価すると、神経発達因子が認知障害に重要な役割を果たしている可能性が示唆され、多くの双極性障害患者において、進行性の認知機能低下の概念は支持されないと考えられる」としている。
(鷹野 敦夫)