胸腺がんは10万人年に0.02という希少悪性疾患である。プラチナベース化学療法が1次治療であるが、プラチナベース化学療法後の標準治療は確立していない。いくつかの試験では、スニチニブなど血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を主な標的とするマルチキナーゼ阻害薬の有効性が報告されている。マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)においては、前臨床試験でスニチニブと同等かそれ以上の阻害活性を示している。兵庫県立がんセンターの伊藤 彰一氏らは、進行または転移のある胸腺がん患者におけるレンバチニブの有効性と安全性を検討する多施設オープンラベル単群第II相REMORA試験を実施。その中間解析の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。
REMORA試験では、プラチナベース化学療法後に進行した転移を有する胸腺がん患者(ECOG PS 0~1)を対象に、レンバチニブ(24mg/日)を増悪または忍容できない有害事象発現まで投与した。主要評価項目は独立放射線審査委員会(IRR)評価による全奏効率(ORR)であった(ORR閾値10%、期待値25%)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢制御率(DCR)、安全性であった。
主な結果は以下のとおり。
・2017年4月~2018年2月、日本の8施設から42例の患者が登録された。
・追跡期間の中央値は15.5ヵ月であった。
・ORRは38.1%(90%信頼区間[CI]:25.6~52.0)で、主要評価項目を達成した。
・病勢制御率は95.2%(PR16例[38.1%]16例、SD24例[57.1%])であった。
・PFS中央値は9.3ヵ月(95%CI:7.7~13.9)であった。
・OS中央値は未達、12ヵ月OS率83.3%であった。
・頻度の高い治療関連有害事象は、高血圧(88.1%)、手足症候群(69.0%)、タンパク尿(66.7%)、甲状腺機能低下症(64.3%)などであった。治療関連死はなかった。
発表者は、レンバチニブはプラチナベース化学療法で増悪した胸腺がん患者の標準治療選択肢の1つになりうるとしている。
(ケアネット 細田 雅之)