認知症患者の精神症状の治療には、薬理学的介入と非薬理学的介入の両方が用いられる。カナダ・St. Michael's HospitalのJennifer A. Watt氏らは、認知症の攻撃性および興奮に対する薬理学的介入および非薬理学的介入の有効性比較を行った。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2019年10月15日号の報告。
対象研究は、認知症の攻撃性および興奮に対する治療介入を比較したランダム化比較試験。データは、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、CINAHL、PsycINFOより検索し、2019年5月28日までの灰色文献および選択した研究やシステマティック・レビューから抽出したリファレンスを用いた。研究の選択、データの抽出、バイアスリスクの評価は、独立した2人1組のレビューアにより実施された。
主な結果は以下のとおり。
・攻撃性と興奮をターゲットとした介入148件(2万1,686例)の分析では、通常ケアと比較し、以下の治療介入が臨床的に有用であった。
●学際的ケア(標準化平均差[SMD]:-0.5、95%信頼区間[CI]:-0.99~-0.01)
●マッサージおよびタッチ療法(SMD:-0.75、95%CI:-1.12~-0.38)
●マッサージおよびタッチ療法と音楽療法の併用(SMD:-0.91、95%CI:-1.75~-0.07)
・レクリエーション療法は、統計学的に有意ではあったが(SMD:-0.29、95%CI:-0.57~-0.01)、臨床的には通常ケアよりも効果的とはいえなかった。
・本研究の限界として、研究の46%において、アウトカムデータが欠落しており、バイアスリスクが高かった。また、治療介入の有害性およびコストは評価されていなかった。
著者らは「認知症の攻撃性および興奮を軽減するための非薬理学的介入は、薬理学的介入よりも効果的であると考えられる」としている。
(鷹野 敦夫)