乳がんは女性で最も頻度の高いがんであり、主な死亡原因である。そして、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は世界中で急速に増加している。この2つの疾患は密接に関連する可能性が高いが、有病率や予後への影響についての詳細な報告は少ない。今回、韓国・高麗大学校のYoung-Sun Lee氏らは、NAFLDは乳がん患者に高頻度で発症すること、またNAFLDは乳がん手術後の再発率を高める可能性があることを示した。大規模後ろ向きコホート研究による報告で、Medicine(Baltimore)誌2019年9月号に掲載された。
研究グループは、2007年1月~2017年6月の間に新たに乳がんと診断された1,949例を本試験に登録した。男性患者、ほかに活動性腫瘍を有する患者、検証不能な脂肪肝患者、追跡不能となった患者などは、本試験から除外した。
脂肪肝は腹部単純コンピュータ断層撮影(CT)スキャンにより評価した。肝臓と脾臓のCT値をそれぞれ3回測定し、肝臓の平均CT値が40 Hounsfield Unit(HU)以下だった場合、または肝臓と脾臓の平均CT値の差が10 HU以下だった場合に、NAFLDと診断した。対照として123人の健康成人も評価した。
乳がん患者におけるNAFLDの有病率は15.8%(251/1,587)と、健康対照者(8.9%、11/123)より有意に高かった(p=0.036)。
NAFLDの有無によって、乳がん患者の全生存率に有意差はなかった(p=0.304)。一方、乳がんの無再発生存率は、NAFLDなしの群でNAFLDありの群よりも有意に高かった(p=0.009)。NAFLDは、乳がん治癒手術後の再発に対する有意な危険因子であった(HR:1.581、95%CI:1.038~2.410、p=0.033)。
これらの結果から研究グループは、乳がん患者の管理においてNAFLDの診断的評価は重要であると述べている。
(ケアネット 野辺 加織)