今年ノーベル生理学・医学賞を受賞した「低酸素応答の仕組みの解明」の研究を基に、各社で低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬の開発が進められている。その1つであるvadadustat(MT-6548)は、田辺三菱製薬がアケビア社から導入した1日1回経口投与のHIF-PH阻害薬で、今年7月に腎性貧血を適応症として厚生労働省に承認申請している。今月、ワシントンで開催された米国腎臓学会腎臓週間(11月5~10日)で、本剤の保存期および血液透析期の腎性貧血患者に対する国内第III相臨床試験の結果が発表された。
vadadustatの有効性は保存期・血液透析期とも52週まで維持
発表された試験は、HIF-PH阻害薬のvadadustatを保存期の腎性貧血患者304例に52週間投与した無作為化非盲検実薬対照第III相試験と、血液透析中の腎性貧血患者323例に52週間投与した無作為化二重盲検実薬対照第III相試験で、対照はどちらも赤血球造血刺激因子製剤(ESA)のダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え)製剤である。
両試験とも、20週および24週の平均ヘモグロビン濃度は、vadadustat群がダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え)製剤群に対して非劣性を示した。さらに、24週以降52週までヘモグロビン濃度は安定して推移し、保存期および血液透析期の腎性貧血患者においてvadadustatの有効性が52週まで維持することが確認された。また、vadadustat群ではベースラインに対してヘプシジンの低下がみられ、鉄代謝を改善させることが示唆された。安全性については、これまで報告されているvadadustat の安全性プロファイルと大きく異なる傾向はみられなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)