これまで、睡眠障害と自殺との潜在的な関連は、いくつかのレビューにより検証されてきた。中国・中南大学のXiaofen Wang氏らは、うつ病患者における睡眠障害と自殺との全体的な関連性を推定し、より具体的な関連因子を特定するため、メタ解析を実施した。BMC Psychiatry誌2019年10月17日号の報告。
PubMed、EMBASE、Cochrane Libraryより、2019年1月1日までに公表された、うつ病患者の睡眠障害と自殺との関連を報告した研究をシステマティックに検索した。オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を用いて、アウトカムを測定した。異質性は、コクランのQ検定、I2を用いて評価した。各研究の方法論的品質の評価には、Newcastle-Ottawa Scale(NOS)を、エビデンスの品質評価には、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)を用いた。睡眠障害と自殺との全体的な関連性を評価し、不眠症、悪夢、過眠症、自殺念慮、自殺企図、自殺完遂など、より具体的なカテゴリーを推定した。
主な結果は以下のとおり。
・18研究が抽出された。
・全体として、睡眠障害は、うつ病患者の自殺と密接な関連が認められた(OR:2.45、95%CI:1.33~4.52)。
・自殺念慮、自殺企図、自殺完遂に対する睡眠障害の増加リスクは、1.24(95%CI:1.00~1.53)~2.41(95%CI:1.45~4.02)の範囲であった。
・自殺との高い相関が認められた因子は、悪夢(OR:4.47、95%CI:2.00~9.97)および不眠症の持続(OR:2.29、95%CI:1.69~3.10)であった。
・エビデンスの質は、全体的なアウトカムおよびうつ病サブグループで非常に低く、うつ病サブグループで低いと評価された。
著者らは「抽出された研究が観察研究であったことを考慮するとエビデンスの質は低いものの、睡眠障害、とくに悪夢や不眠症は、うつ病患者の自殺リスクを高める可能性があることが示唆された。このメカニズムを明らかにするためには、より適切に設計された研究が必要である」としている。
(鷹野 敦夫)