トランス脂肪酸と認知症との関連はよくわかっていない。九州大学の本田 貴紀氏らは、トランス脂肪酸の客観的バイオマーカーである血清エライジン酸(trans 18:1 n-9)レベルと認知症やそのサブタイプとの関連をプロスペクティブに調査した。Neurology誌オンライン版2019年10月23日号の報告。
対象は、2002~03年にスクリーニング検査を受け、2012年11月までフォローアップ(期間中央値:10.3年、四分位範囲:7.2~10.4)を行った、認知症でない60歳以上の日本人高齢者1,628人。血清エライジン酸レベルは、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて測定し、四分位に分類した。血清エライジン酸レベルとすべての原因による認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症のハザード比を推定するために、Cox比例ハザードモデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ期間中に、いずれかの認知症を発症した高齢者は377人(AD:247人、血管性認知症:102人)であった。
・従来のリスク因子で調整後、高血清エライジン酸レベルは、すべての原因による認知症(p for trend=0.003)およびAD(p for trend=0.02)の発症リスク増加と関連が認められた。
・総エネルギー、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の摂取を含む食事の因子で調整後も、これらの関連性は、有意なままであった(各々p for trend<0.05)。
・血清エライジン酸レベルと血管性認知症との間に、有意な関連性は認められなかった。
著者らは「高血清エライジン酸レベルは、高齢者のすべての原因による認知症およびADの発症に対する潜在的なリスク因子であることが示唆された。トランス脂肪酸を減らすための公衆衛生政策は、認知症の1次予防に有用な可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)