HPVワクチンの接種推進の取り組み

提供元:ケアネット

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公開日:2020/01/14

 

 11月30日・12月1日に開催された「第23回 日本ワクチン学会学術集会」(会長:多屋馨子〔国立感染症研究所〕)では、「サーベイランスから対策へ 有効性と安全性の両輪で考えるワクチン元年」をテーマに、臨床、疫学、製造開発、行政関係などから参加者が一堂に会して開催された。

 同集会では、インフルエンザやMRワクチンはもちろん、来年10月より定期接種化される予定のロタワクチンなどに関する発表も行われた。

 本稿では、2013年より積極的接種勧奨が差し控えられているHPVワクチンについて取り上げる。

HPVワクチン接種のコツは丁寧な情報提供
 HPVワクチンは、将来発生する子宮頸がんの予防として接種が行われるワクチンである。子宮頸がんは、予防接種で防げる病気(Vaccine Preventable Diseases:VPD)として先進国では広く接種が行われ、その有効性、安全性も確認されている。わが国では、2013年に定期接種化されたが、全国で慢性疼痛などの症状が報告され、現在に至るまで積極的接種勧奨は差し控えられている。

 こうした状況に対し、地域における取り組みとして「静岡県小児科医会 予防接種協議会によるHPVワクチン接種推進プロジェクト」について、田中 敏博氏(静岡県小児科医会 予防接種協議会/静岡厚生病院 小児科)がレポートした。

 同協議会は、県内の予防接種地域差の均てん化と情報交換のために設立され、重点課題として2017年はB型肝炎とおたふくかぜワクチンを、2018年にはHPVワクチンを取り上げて、その推進に取り組んできた。

 HPVワクチンに関しては主な活動として、医療者向けの勉強会・講演会の実施、シンポジウムの開催(録画DVDの配布)、各種調査研究を行っている。

 同協議会が運営し、一般公開している接種件数データベースを紹介した。静岡県内ではHPVワクチンの接種件数は回復しつつあることがわかるという。また、このデータベースでは、記載された各症例のエピソードがコメント共有として閲覧可能で、接種に臨むにあたっての思いや副反応情報などを把握することができる。

 こうした活動を踏まえて、外来では、HPVワクチン接種対象者に対し、「積極的な呼びかけ」「見える化したデータ紹介」「接種機会の的確な把握」「接種後の細かいフォロー」などを行うことで、子宮頸がんとその予防のためのワクチンに対する意識を高めていくことができると説明した。

 最後に同氏は、「定期接種であるHPVワクチンの接種推進には、医療者が積極的に働きかけを行うことが出発点である。接種を躊躇しているのはむしろ医師の側である」と指摘した。

(ケアネット 稲川 進)