日本人トリプルネガティブ乳がんのMSI-H頻度は?

提供元:ケアネット

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公開日:2020/01/10

 

 日本人のトリプルネガティブ乳がん患者におけるMSI-H頻度は高くはないものの、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)のターゲットとなる患者が存在することが示唆された。九州大学の倉田 加奈子氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年1月6日号掲載の報告より。

 本邦では、MSI-HまたはdMMRを有する進行固形がんに対しペムブロリズマブが承認されている。また、ゲノム不安定性を有する腫瘍はPD-1 / PD-L1阻害に良好な反応を示し、難治性乳がんの有望なターゲットとなりうることが示唆されている。しかし、日本人のトリプルネガティブ乳がんにおけるMSI-H頻度は明らかになっていない。

トリプルネガティブ乳がんでMSI-Hの場合、Ki-67高値など予後不良とされる特徴

 本研究では、2004年1月から2014年12月の間に、国内3施設で術前化学療法なしで切除を実施した女性トリプルネガティブ乳がん患者228例を対象に、MSI-H頻度を後ろ向きに評価した。MSI解析には、5種類のマイクロサテライトマーカー(BAT-26、NR-21、BAT-25、MONO-27、NR-24)によるMSI Analysis System Version 1.2(Promega)を使用している。

 トリプルネガティブ乳がん患者におけるMSI-H頻度を評価した主な結果は以下のとおり。

・トリプルネガティブ乳がんの228検体のうち、222検体(97.4%)がマイクロサテライト安定性、4検体(1.7%)がMSI-L(いずれか1種類のマーカーで不安定性を示す)、2検体(0.9%)がMSI-H (2種類以上のマーカーで不安定性を示す)であった。
・MSI-Hの2検体では、ともにBAT-26、NR21およびBAT-25の3つのマーカーで不安定性を示した。これらの腫瘍はそれぞれT1N0およびT2N0であり、NG3およびKi-67高値(>30%)といった予後不良とされる特徴を有し、基底細胞様、non-BRCAnessに分類された。1検体でのみPD-L1発現が確認され、2検体でTIL低値およびCD8陰性であった。
・MSI-Lの4検体では、不安定性を示したマーカーはそれぞれ異なり、4検体が基底細胞様、2検体のみnon-BRCAnessに分類された。また、1検体のみPD-L1発現がありTIL高値、そのほか3検体はTIL低値であった。

 著者らは、日本人のトリプルネガティブ乳がん患者におけるMSI-H頻度はまれではあるものの、ICIの潜在的なターゲットとなる患者は存在し、包括的なゲノムプロファイリングのプラットフォームを使用してピックアップしていく必要があると結論付けている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)