厚生労働省は、医師の働き方改革の推進に関する検討会において、複数の医療機関で勤務する医師の労働時間を通算し、上限を規制する取りまとめ案を出している。これを受け、日本医師会は「医師の副業・兼業と地域医療に関する日本医師会緊急調査」を行った。アンケートは、全国の病院8,343施設を対象にWebで行われ、3,713施設(44.5%)から回答を得た。
副業・兼業は当たり前だが、通算には人員確保や経営への不安が
調査結果によると、勤務医師の副業・兼業に関する取り扱いについては、「就業規則により自院以外での勤務は認めていない」と答えた施設が11.5%だった。一方、認めている施設は「病院長が許可した場合のみ認めている」(48.9%)、「特段の規定はなく、各医師の自由意思に任せている」(30.8%)と8割近くに上り、副業・兼業は当たり前と言える状況が明らかになった。
今後地域医療の確保と医師の働き方改革を両立していく必要のある、いわゆるB水準に相当する施設が抽出された分析では、“複数医療機関に勤務する医師の労働時間を通算すること”に対し、「通算に反対」(28%)、「どちらかといえば反対」(23.8%)と、合わせて半数以上が反対という結果に。
通算された場合の不安な項目としては、「宿日直体制が維持困難」(79.8%)、「派遣医師の引き上げ」(62.9%)、「病院の経営が悪化する」(52.9%)、「病院勤務医の減少につながる」(41.5%)などが多く選ばれた。
現場からの意見を踏まえ、議論が進められる
調査結果から、以下の現状などが示された。
・制度を変えた場合の影響が多岐にわたり、何が起こるかわからない
・研鑽のために副業・兼業することは、医療の質の向上にもつながる
・労働時間の通算によって、医療機関での事務負担が増加する懸念がある
・割増賃金の算出は極めて困難
・健康確保は勤務時間の把握が目的化しないような実効性ある仕組みが必要
・予見を持って対応する必要があり、混乱が起こってからの回復は困難
同会・常任理事の松本 吉郎氏は、「医師にはさまざまな多様性を持った働き方があり、一般の労働者と同じ対応を単純に当てはめると混乱が生ずる恐れがある。また、医師の副業・兼業については多くの課題があり、これらに対して適切に考えていかなければならない」と述べた。
本アンケートでは、現場からの切実な声が多数寄せられている。それらの意見も踏まえ、検討が進められる見込みだ。
(ケアネット 堀間 莉穂)