COVID-19、空気・環境表面・PPEからの感染リスクは?/JAMA

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/03/13

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における医療機関内での感染が懸念されているが、環境汚染の程度と感染リスクの関係は明らかになっていない。シンガポール国立感染症センターのSean Wei Xiang氏らは、患者が隔離されている部屋と控え室、診察にあたった試験担当医師のPPE(個人用保護具)からサンプルを収集、その汚染程度を調査した結果をJAMA誌オンライン版2020年3月4日号のリサーチレターに報告した。

 2020年1月24日~2月4日、COVID-19患者3例が隔離されている部屋と浴室において、1例は定期清掃前、2例は定期清掃後にサンプルを採取した。部屋の接触頻度の多い部分は5,000ppmのジクロロイソシアヌル酸ナトリウムで清拭(1日2回)、床は1,000ppmのジクロロイソシアヌル酸ナトリウムで清拭した(1日1回)。2週間の隔離期間のうち採取を実施したのは5日間だった。

 主な結果は以下のとおり。

・1例目(清掃後の採取):病状は中等度、咳と発熱、息切れがあった。発症後4日目と10日目に採取。患者は清掃後も症状を示していたが、全サンプルが陰性だった。
・2例目(清掃後の採取):病状は中等度で咳と発熱、喀痰があった。発症後8日目と11日目に採取。8日目は症状があり、11日目は無症状だった。全サンプルが陰性だった。
・3例目(清掃前の採取):症状は咳だけで、3例中最も病状が軽かった。発症後5日目に採取。居室15ヵ所(換気扇あり)中13ヵ所(87%)、トイレ5ヵ所(便器、洗面台、ドアハンドル)中3ヵ所(60%)が陽性となり、控え室と廊下は陰性だった。
・靴の表面からの採取サンプルは1点のみ陽性で、ほかはすべて陰性だった。
・空気からの採取サンプルはすべて陰性だった。

 著者らは、「空気のサンプルは陰性だったが、排気口のサンプルは陽性であり、ウイルスを含む飛沫が空気の流れで通風孔に運ばれて溜まった可能性がある」と指摘。さらに清掃後に採取した2例の全サンプルが陰性だったことを受け、「新型コロナウイルス感染者の飛沫や便による汚染環境が感染経路になり得ることを示唆すると同時に、環境衛生と手指衛生を厳守する必要性を裏付けるものだ」としている。

 なお、本試験の限界として、ウイルスの生存能力を実証するための培養は実施されなかったこと、方法論に一貫性がなくサンプルサイズが小さかったこと、採取された空気は全体のほんのわずかに過ぎなかったことを挙げている。

(ケアネット 杉崎 真名)