国立がん研究センターの研究班は3月17日、全国がんセンター協議会(以下、全がん協)加盟の全国32施設における、全がんおよび部位別の、がん生存率最新データを公表した。前回調査と比較して、全がんの5年相対生存率は0.5ポイント増の68.4%、10年相対生存率は0.8ポイント増の57.2%であった。現在、10年生存率の算出と公開を行っているのは同研究班によるもののみで、部位別生存率において相対生存率(がんによる死亡)のほか、実測生存率(全死亡)も提示していることが特徴。
<調査概要>
収集症例:1997~2011年までに32施設で診断治療を行った68万9,207症例
集計対象:
[5年生存率]2009~11年に診断治療を行った症例のうち、以下の条件を満たした14万2,947症例(前回調査は2008~10年症例)
[10年生存率]2003~06年に診断治療を行った症例のうち、以下の条件を満たした8万708症例(前回調査は2002~05年症例)
集計基準:
・15歳未満、95歳以上は除外
・良性腫瘍、上皮内がん、0期、転移性腫瘍は除外
・自施設診断自施設治療、および他施設診断自施設治療症例(診断のみは解析対象外)
・下記の基準を満たした施設のデータのみを集計
臨床病期判明率60%以上
追跡率(予後判明率)90%以上
5年相対生存率は前立腺、乳、甲状腺がんで90%以上
部位別(22種)・臨床病期別に、全症例と手術症例の5年生存率が算出された。全部位全臨床病期の5年相対生存率(全症例)は68.4%で、前回調査の67.9%からは0.5ポイント増でほぼ横ばい、初回調査(1997~99年)の61.8%からは徐々に改善傾向がみられている。部位別の5年生存率(相対生存率/実測生存率)について、主な結果は以下の通り:
・5年相対生存率90%以上
前立腺(100%/88.6%)、乳(女)(93.7%/91.0%)、甲状腺(92.4%/88.7%)
・5年相対生存率70%以上90%未満
子宮体(86.4%/83.9%)、大腸(76.8%/70.3%)、子宮頸(76.8%/75.0%)、胃(74.9%/67.6%)など
・5年相対生存率50%以上70%未満
腎臓など(69.4%/63.9%)、膀胱(69.0%/60.6%)、卵巣(66.2%/64.7%)
・5年相対生存率30%以上50%未満
食道(46.0%/41.7%)、肺(45.2%/41.2%)、肝(37.0%/33.1%)
・5年相対生存率30%未満
胆のう胆道(28.6%/25.6%)、膵(9.9%/9.2%)
10年相対生存率は前立腺、乳、甲状腺、子宮体がんで80%以上
部位別(18種)・臨床病期別に、全症例と手術症例の10年生存率が算出された。全部位全臨床病期の10年相対生存率(全症例)は57.2%で、前回調査の56.4%からは0.8ポイント上昇。部位別の10年生存率(相対生存率/実測生存率)について、主な結果は以下の通り:
・10年相対生存率90%以上
前立腺(97.8%/72.3%)
・10年相対生存率70%以上90%未満
乳(85.9%/80.9%)、甲状腺(84.1%/77.4%)、子宮体(81.2%/76.5%)
・10年相対生存率50%以上70%未満
子宮頸(68.8%/65.6%)、大腸(67.8%/56.5%)、胃(65.3%/53.7%)、腎など(64.0%/54.5%)など
・10年相対生存率30%以上50%未満
卵巣(45.3%/43.1%)、肺(30.9%/25.8%)、食道(30.9%/25.4%)
・10年相対生存率30%未満
胆のう胆道(18.0%/14.8%)、肝(15.6%/12.8%)、膵(5.3%/4.5%)
研究班では、前回調査との比較において、多くの部位で5年および10年の生存率上昇を認める一方、低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められないとしている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)