アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のNeeltje van Doremalen氏らは、エアロゾル(粒子径5μm未満)での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とコロナウイルス(SARS-CoV-1)の表面安定性について比較した結果、SARS-CoV-2はエアロゾル内で3時間、物質の表面上では2~3日生存できることを示唆した。NEJM誌オンライン版2020年3月17日号のCORRESPONDENCEに報告した。
研究者らはSARS-CoV-2とSARS-CoV-1のエアロゾル中の安定性を評価するためにSARS-CoV-2(MN985325.1)およびSARS-CoV-1Tor2(AY274119.3)株を用い、各ウイルスのエアロゾルや物質表面上(プラスチック、ステンレス鋼、銅、段ボール)での減衰率を調査した。
主な結果は以下のとおり。
・SARS-CoV-2はエアロゾルの状態で3時間生存可能だった。感染力価として空気1Lあたりの50%組織培養感染値量(TCID50)は103.5から102.7に低下、SARS-CoV-1の観察結果(TCID50:104.3から103.5へ低下)と類似していた。
・物質表面での生存について、SARS-CoV-2とSARS-CoV-1で類似し、それぞれ銅や段ボールよりもプラスチックやステンレス鋼の表面で安定した。また、これらへの表面の付着72時間後までを観察した結果、ウイルス力価は大幅に低下した(プラスチックのTCID50/mLは、SARS-CoV-2で103.7から100.6、SARS-CoV-1で103.4から100.7へ低下。48時間後のステンレス鋼のTCID50/mLは、SARS-CoV-2で103.7から100.6、SARS-CoV-1で103.6から100.6へ低下)。
・銅では、4時間後にSARS-CoV-2が、8時間後にSARS-CoV-1が測定されなくなった。
・段ボールでは、8時間後にSARSCoV-1が、24時間後にSARS-CoV-2が測定されなくなった。
・両ウイルスは、すべての実験条件でウイルス力価が指数関数的に減少した。
・エアロゾル状態でのSARS-CoV-2とSARS-CoV-1の半減期は類似しており、推定中央値は約1.1〜1.2時間だった(95%信頼区間[CI]:0.64〜2.64、0.78~2.43)。
・両ウイルスの半減期は銅でも同じ傾向を示し、段ボールではSARSCoV-1よりSARS-CoV-2のほうが長かった。
・両ウイルスの最長生存率をステンレスとプラスチックで調べたところ、SARS-CoV-2の半減期の推定中央値は、それぞれ5.6時間と6.8時間だった。
・両ウイルスの半減期の推定差について、段ボール以外は小さかった。
(ケアネット 土井 舞子)