皮膚科医にとって難問の1つとなっている妊婦への抗真菌薬投与について、デンマークの全国規模の妊娠登録ベースコホートにおける研究結果が発表された。デンマーク・Bispebjerg and Frederiksberg HospitalのNiklas Worm Andersson氏らによる検討で、経口または局所テルビナフィンの投与と、主要な形成異常または自然流産のリスク増大の関連は特定できなかったという。テルビナフィンは一般的に使用される抗真菌薬だが、妊娠中の使用に関する安全性データは限定的である。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年3月4日号掲載の報告。
抗真菌薬の妊婦への投与について165万649例を対象にデータ解析
抗真菌薬の妊婦への投与についての検討は、1997年1月1日~2016年12月31日に妊娠が登録された165万649例を対象とし、2019年7月11日~10月20日にデータの解析が行われた。
傾向スコアマッチング法を用いて、経口テルビナフィン曝露vs.非曝露(1対10の割合)、局所テルビナフィン曝露vs.非曝露(1対10)、経口vs.局所のテルビナフィン曝露(1対1)の比較を行った。曝露の定義は、経口または局所のテルビナフィンを処方された場合とした。
主要評価項目は、ロジスティック回帰法を用いて算出した主要な形成異常に関する有病率オッズ比(主要アウトカム)、Cox比例ハザード回帰法を用いて算出した自然流産のハザード比(副次アウトカム)であった。
妊婦への抗真菌薬投与についての研究の主な結果は以下のとおり。
・ベースコホートの妊娠165万649例において、経口テルビナフィン曝露例は891例(平均年齢30.4[SD 6]歳)、局所テルビナフィン曝露例は3,174例(29.5[SD 5.4]歳)であった。解析に包含された非曝露妊娠例の合計は最大4万650例であった。
・主要形成異常リスクの傾向マッチング比較において、有病率オッズ比は、経口テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.01(95%信頼区間[CI]:0.63~1.62)であった(絶対リスク差[ARD]:0.04%、95%CI:-1.69~1.76)。
・同様に、局所テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.08(95%CI:0.81~1.44)であった(ARD:0.26%、95%CI:-0.73~1.26)。
・同様に、経口vs.局所のテルビナフィン曝露では、1.18(95%CI:0.61~2.29)であった(ARD:0.59%、95%CI:-1.71~2.88)。
・自然流産のリスクに関するハザード比は、経口テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.06(95%CI:0.86~1.32)であった(ARD:0.13%、95%CI:-1.97~2.24)。
・同様に、局所テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.04(95%CI:0.88~1.21)であった(ARD:0.17%、95%CI:-0.64~0.98)。
・同様に、経口vs.局所のテルビナフィン曝露では、1.19(95%CI:0.84~1.70)であった(ARD:1.13%、95%CI:-2.23~4.50)。
(ケアネット)