AI活用の皮膚がんスクリーニング、患者の受け止めは?

提供元:ケアネット

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公開日:2020/04/29

 

 COVID-19パンデミックを受け、国内では、時限措置ながら初診からのオンライン診療が解禁され、対面診療至上主義に大きな風穴を開けた。患者サイドの不安・不満が気になるところだが、人工知能(AI)による皮膚がんのスクリーニングについて、医師・患者の人間的な関係性が担保された状態ならば許容されうることが、米国・イェール大学医学大学院のCaroline A. Nelson氏らによる皮膚がん患者を対象とした質的研究結果によって示された。AIの利用は医学のあらゆる領域に及んでおり、皮膚科領域では、皮膚病変を分類するdirect-to-patientおよびclinician decision-supportのAIツールに関する評価が行われている。患者の受診行動を変えるAIの態勢はできているが、患者側からの観点はまだ十分に理解されていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年3月11日号掲載の報告。

 研究グループは、患者がAIをどのように捉えているのか、また皮膚がんスクリーニングでのAI使用についてどのように理解しているかを調べる質的研究を行った。

 ブリガム&ウィメンズ病院の一般皮膚科クリニックとダナ・ファーバーがん研究所の皮膚がんクリニックで、グランデッド・セオリーアプローチ(Grounded Theory Approach:GTA)を用いた半構造化インタビュー解析を行った。

 各インタビューは、評価者相関測定法により2人のリサーチャーがそれぞれコード化した。調整済みコードを使って、コードの出現頻度を評価した。

 主要評価項目は、AIの概念化について、AIのベネフィットとリスク、強みと弱み、AI適用の受け止め、ヒトとAIの臨床意思決定の齟齬に対する反応、AIを推奨するのか反対するのかについてであった。

 主な結果は以下のとおり。
・被験者対象は48例。研究は2019年5月6日~7月8日に行われた。
・48例のうち26例(54%)が女性であり、平均年齢は53.3(SD 21.7)歳であった。
・16例(33%)が黒色腫既往、16例(33%)が非黒色腫の皮膚がん既往、16例(33%)が皮膚がん非既往であった。
・24例がdirect-to-patient AIツールについてインタビューを受け、24例がclinician decision-support AIツールについてインタビューを受けた。
・2つのコーディングチームの評価者相関評価結果は、κ=0.94とκ=0.89であった。
・患者はAIを主として、認知・認識(cognition)の概念として捉えていた。
・皮膚がんスクリーニングにおけるAI使用のベネフィットとして最も多く認められたのは、診断スピードの上昇(29例[60%])および受診アクセスの増大(29例[60%])であった。
・患者の不安の増大が最も多く認められたのは、リスクに関してであった(19例[40%])。
・患者がAIの最大の強みと捉えているのは診断の正確性(33例[69%])である一方、最大の弱みと捉えているのは診断の不正確性(41例[85%])であった。
・調査から浮かび上がった課題は、ヒトとAIの共生の重要性であった(45例[94%])。
・ヒトとAI間の臨床意思決定の対立において、最も多く認められた反応は、生検を求めることであった(32例[67%])。
・全体として36例(75%)が、AIを家族や友人に推薦するとした。