これまでの研究において、夜間に寝室を暗く保つことは、双極性障害(BD)患者の躁症状減少と関連することがわかっている。しかし、実際の夜間での光曝露の状況と躁症状との関連は明らかとなっていない。藤田医科大学の江崎 悠一氏らは、夜間の寝室での光曝露とBD患者の躁症状との関連について調査を行った。Chronobiology International誌オンライン版2020年4月2日号の報告。
本研究は、BD外来患者184例を対象とした横断的研究である。夜間の睡眠中の平均光強度は、ポータブル光度計を用いて、7夜連続で測定した。躁症状は、ヤング躁病評価尺度(YMRS)を用いて評価し、スコア5以上を「軽躁状態」と定義した。
主な結果は以下のとおり。
・YMRSスコアの中央値は2.0(四分位範囲:0~5.0)、軽躁状態が認められた患者は52例(28.2%)であった。
・夜間の平均光強度が3ルクス以上の患者は、3ルクス未満の患者と比較し、軽躁状態の有病率が有意に高かった(36.7% vs.21.9%、p=0.02)。
・BDタイプ、抑うつ症状、睡眠時間、日中の身体活動で調整した多変量ロジスティック回帰分析では、夜間の平均光強度が3ルクス以上の患者は、3ルクス未満の患者と比較し、軽躁状態のオッズ比(OR)が有意に高かった(OR:2.15、95%信頼区間[CI]:1.09~4.22、p=0.02)。
・この関連性は、YMRSスコア6以上のカットオフ値においても有意なままであった(OR:2.51、95%CI:1.15~5.46、p=0.02)。
著者らは「夜間の寝室での光曝露とBD患者の躁症状との有意な関連が示唆された。本結果は、必ずしも因果関係を示唆するものではないが、BD患者への有益な非薬理学的介入および個別化された治療を行ううえで役立つであろう」としている。
(鷹野 敦夫)